Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

吉田敏彦の選挙公報(2019年盛岡市議会選)

今回は2019年8月25日に投票が行われた岩手県盛岡市議会選に立候補した吉田敏彦*1を紹介します。

選挙運動は様々なものがありますが、演説は基本的な選挙運動の一つです。また、選挙公報も選挙運動の一つですが、これは紙に印刷されるものであり、演説とはまた違った性質を持ちます。具体的な違いを挙げるとすれば、演説は選挙公報とは違い、言葉の調子や動きといった要素がありますし、選挙公報は演説と異なり、紙として残って何度も見返すことができるため、演説より複雑なことを伝えることに適しています。このように演説と選挙公報は別々の性質を持ちますが、今回紹介する吉田敏彦は選挙公報上で演説的なものを取り入れた候補です。

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選挙公報を上に示しました。左の枠の中に文章が記載されていますが、最初の部分の※印のところは「以下について、声を知り上げる事無く、太字の部分を強調して普通に話しかける口調でお願いできればと思っています。尚()内は、副音声です。(読み上げる所要時間は、1分15秒から1分45秒を想定しています)」と記載されています。そして、この文章の下には「皆様、(左から右へ首を振ってから)こんにちは。(2秒間、礼)」と記載されています。つまり、この選挙公報は動きも含めた演説の原稿となっており、これを読み進めることで有権者は演説を想像できるようになっているのです。

さて、この演説原稿となっている選挙公報を読み進めてみましょう。まず、東日本大震災の犠牲者へのお悔やみを述べ、4秒間黙礼をします。そして、被災者に対してもお見舞いの気持ちを述べ、3秒間目礼をします。そして、「と」という文字を強調し、「とうほく大好き」ということと自分の名前を述べ、一票のお願いと自身の政策を述べます。

その政策は盛岡をさらに良くすること、憲法を護ること、私利私欲のない姿勢で仕事をしていたのでそれを貫くことを述べています。そして、政策を述べた後は「(目線を最後列の左から右、次に最前列の左から右へ配ってから)」と視線を動かして、「何卒、宜しくお願い致します」と述べて、3秒間礼をして、「以上です」と述べて終わっています。

このように動きを含めた演説の原稿を記載し、読む人に演説の様子を想像させるという極めて珍しい形の選挙公報を示した吉田敏彦ですが、得票数203票(総有効投票数123,573.994*2、無効票3,604票)で44人中44位(定数38)という結果に終わってしまいました。

*1:選挙の届け出では「よしだ としひこ」となっており、選挙公報でもこのようにきさいされていますが、岩手日報では「吉田 敏彦」と記載されています

*2:案分票切り捨て0.006票