Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

ドクター中松チルドレン3名の選挙公報(2015年統一地方選)

(この記事は同人誌『補導聯盟通信 2015年夏号』に掲載した文章を再編集したものです)

「XXチルドレン」という用語があったことを覚えている方は多いと思います。このXXには小泉や小沢といった、当時の自民党民主党の有力者の名前が入っていました。つまるところ、この「XXチルドレン」はこれらの大物政治家の庇護や人気のもとに当選し、陣笠議員的に活動している若手議員を指します。

この「XXチルドレン」のXXは基本的には大物政治家の名前が入りますが、何とドクター中松チルドレン」なる集団が存在したりします。この「ドクター中松チルドレン」は2015年の統一地方選が初ではなく、前回の2011年の統一地方選にその名前を確認することができます。本ブログで紹介した岩川ひとしは2011年の練馬区議選にて、ドクター中松チルドレンを名乗って立候補しています。なお、岩川ひとしはこの2015年統一地方選においては、別の選挙に立候補していましたが、ドクター中松チルドレンを名乗っていません。

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このドクター中松チルドレンは2007年辺りに結成された組織であり、「DNC」なる略称まで存在しましたが、この岩川ひとしが立候補した2011年まで、少なくとも外向けの目立った活動は見られませんでした。さらにはこの2011年の岩川ひとしが立候補した時もドクター中松が宣伝をしたりせず、ドクター中松チルドレンは本当にドクター中松が関わっているのか、疑問視されていました。

このように、いまいち謎であったドクター中松チルドレンですが、何と2015年の統一地方選ではドクター中松チルドレンを名乗った候補が3人も出るという驚くべき展開になりました。このドクター中松チルドレンとして立候補したのは目黒区議会選に立候補した田中ひろむ、世田谷区議会選に立候補した高橋ひろ子、豊島区議会選に立候補した広田よしひろの3名です。なお、選挙公報と同時に今回もrukaruruさんのサイト、広報用掲示板の各候補者のポスター紹介ページへのリンクを掲載しますので、こちらもご参照ください。

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まず、上に示した目黒区議会選に立候補した田中ひろむ選挙公報を見てみましょう。ドクター中松チルドレン公認推薦と書いてあり、ドクター中松チルドレンが政治団体的な組織であることが分かります。そして、ドクター中松チルドレンの説明として「発明を通して、夢と希望のある社会づくりに貢献します。」「日本の資源は人、発明により、世界に貢献できる人材の教育に貢献します。」「発明により、世界の繁栄に貢献します。」ドクター中松らしい発明絡みのビジョンを提示しています。ただ、他の部分を見てみると、発明と言うようなドクター中松的なキーワードは見られず、かなり普通で真っ当な政策を提示しています。なお、当時存在していた本人のウェブページによると*1地域のボランティアでドクター中松に出会い、そこで共感したのがきっかけとのことです。

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次に上に示した世田谷区議選に立候補した高橋ひろ選挙公報を見てみましょう。ここでもドクター中松チルドレンと真っ先に書いており、田中ひろむと同様、3つのビジョンを提示しています。そして、「戦争のない国」「原発のない国」「貧困でない国」と3つの独自ののビジョンの後にドクター中松チルドレンに匹敵するような文字列がありました。それはドクター中松だけではなく、検察庁の裏金を暴露した後、暴力団が絡んだ犯罪で実刑判決を受け、現在も様々な活動をしている「市民連帯の会代表 三井環」が推薦をしていたまです。さらに興味深いのは選挙公報にアドレスが記載されている本人のウェブページです。いきなり最初にドクター中松大総理を待望する会」なる謎の団体名が記されています。そして、下に示したようにドクター中松 クリエイティブワールド 組織図」なる謎の図がありますが、そこには世界最大のドクター中松 クリエイティブワールドなる国を作りドクター中松を大総理(Super President)なる支配者にし、突っ込み所が満載の様々な団体を統括するという組織が描かれています。

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引用元:高橋ひろこ公式ホームページ

ここでドクター中松チルドレンの役割が定義されており、それは政治を司る部署である「ドクター中松大総理を待望する会」の下部組織となっています。また、この高橋ひろ子のウェブページにはドクター中松との関係も記しており、これによるとドクター中松の国政選挙を1991年から応援」しているとのことで、これが本当だとすれば、かなりの古参であるということになります。この他、明治安田生命労働組合の役員を務めていたことがあったり、三井環の市民連帯の会のホームページ担当をしていたり、色々と面白い経歴を有していることも分かります。また、この高橋ひろ子はこの選挙から約1.5年後の2016年7月に開催されたドクター中松のイベント「世界天才会議」でその姿を確認することができました。ここでは「ゴールドオフィサー会員」を名乗り、「平和な世界の建設を人間探求で!」というタイトルの論文を配布していました。この論文ですが、ノーパンしゃぶしゃぶ押尾学事件、舛添要一の話などの事件を挙げ、最終的に「知的な女性の活躍が必要である」というような主張をしていました。

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最後に豊島区議会選に立候補した広田よしひろ選挙公報を見てみましょう。前述した2人と大きく異なる点として「所属なし」と選挙公報に書いており、ドクター中松チルドレンであることを記していません。しかしながら、ドクター中松チルドレンであることを隠しているというわけではないようで、「ドクター中松大総理を待望する会」(リンク先はウェブアーカイブ)のウェブページではドクター中松チルドレンの1人として紹介されていました(ただし、現在は名前があることしか確認できない)。また、rukaruruさんのページに掲載されているポスターではドクター中松チルドレンの文字はありませんが、ドクター中松チルドレンという文字が入っているバージョンのポスターもあることが確認されています。ただ、他の2人と比べ、発明などのドクター中松らしい文字が全く見られず、広田よしひろがなぜドクター中松チルドレンを名乗っているのか、情報もなく、かなり謎な感じでした。

このように2015年の統一地方選では2011年の時と比較して、ドクター中松チルドレンの活動内容がある程度、判明しました。これらドクター中松チルドレンの選挙結果ですが、目黒区議会選に立候補した田中ひろむは得票数188票(総有効投票数86,264票)で49人中49位(定数36)、世田谷区議会選に立候補した高橋ひろ子は得票数308.88票*2(総有効投票数292,920票)で82人中82位(定数50)、豊島区議会選に立候補した広田よしひろは得票数487票(総有効投票数86,352票)で55人中50位(定数36)といずれも落選に終わり、広田よしひろ以外は最下位という結果に終わってしまいました。

*1:http://tanakahiromu27.com/(リンク切れ)

*2:小数点以下は按分票