Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

蒲生健二の選挙公報(2015年大阪府議会選 東大阪市選挙区)

(この記事は同人誌『補導聯盟通信 2015年夏号』に掲載した文章を再編集したものです)

大日本帝国的な体制の復活を望む人というのはある程度存在します。とはいえ、これが戦中的な体制の復活以外にも大正デモクラシー的な観点からの再評価という観点もあり、一概には言えません。とはいえ、基本的には戦中的な体制の復活を訴える人が多いのは事実としてはあります。2015年の統一地方選では「大日本帝国構想」なるものを訴えて、4月12日に投開票が行われた大阪府議会選 東大阪市選挙区から立候補した蒲生健二なる人物がいました。

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選挙公報を上に示します。「やらせない政治が答えです」と書いており、「政治家に成長戦略は作れません」として、行政サービスの効率化で税金を下げ、民間に任せるという小さい政府的スタンスを示しています。また「愚かな議論をツッコミ斬り捨てます」という部分では「あまりに愚かな言論が横行しており、このままではストレスで殺される!生き延びるためには政治家になるしかない!」というなかなかすごい立候補の動機が書いてあります。ここでは具体的に5つのことが書いてあり、学校の弁当の件や在日特権はうんぬんは愚かの極みであること、生活保護を問題視することは問題であることが記されています。この5つの中でも引く櫃すべきは原発を再稼働すべきという部分とそこに続く核廃棄物に関する部分です。核廃棄物の無害化に万年かかるという論に関しては「笑い死にしそう」といきなり強烈なことを述べています。その根拠としては「万年など月面基地が出来て、ガンダムとザクがわんさかいていいレベルです」とモビルスーツの名前まで出し、その科学水準ならば、核廃棄物は問題にならないと述べ、100年もすれば宇宙に安全安価にアクセスできるので、太陽に向かって核廃棄物を捨てると述べている点は色々と独特な感じです。

そして、次の部分では大阪都構想についての批判で、二重行政の無駄として挙げられている事例がおかしいことを述べています。ここでいわゆるPlan, Do, Check, ActionのかいわゆるPDCAサイクルを回すことを唱えています。そして、ここで都構想の代替案として出てくるのが冒頭で紹介した大日本帝国構想」です。ここでは「アニメランド、神道テーマパーク、復刻版平城京なにわの海の時空館をクラブに改装」ということを述べており、一般的な大日本帝国復活論とは明らかに一線も二線も画した論を述べています。この「大日本帝国構想」に関しては、詳しくは「八戦一宇」という自身のウェブサイトを見てほしいということと「このサイトにあるくらいのVisionを示せてこそ成長戦略でしょう」という一言を記し、選挙公報を締めています。

さて、現在は残念ながら、ウェブサイトが消されており、ウェブアーカイブにも残っていませんが、「八戦一宇」というサイト内の「大日本帝国構想」*1が余りにも強烈でしたので、紹介します。ここではオリンピックのコストは東京に負担してもらい、観光客を関西に呼び込むというスタンスを示し、具体的にはアニメランドの建設や志摩スペイン村を無くし、ここに神道テーマパークを作ること、奈良ドリームランドの跡地に平城京を復元させること、忍者関係のスポーツを作り、伊賀と甲賀をそのスポーツの聖地とすることといったことを提唱しています。このほか、面白いところとしては、日本ならではのカジノの建設を提唱しています。この日本ならではということを詳しく見てみると、着物の姐さんが壺振りをする丁半ばくちやおいちょかぶといった日本独特の時代がかったようなものから、漫画のカイジに出てくるようなギャンブルといったものを提案しています。このギャンブルの部分では興味深い提案も見られます。それは太鼓の達人ダンスダンスレボリューションのトーナメントの優勝者予想や対戦式のコンピュータゲームの勝者が賞金を獲得できるといった、いわゆるe-sportを絡めたギャンブルを提唱している点で、この辺りは結構面白い部分ではないかと思われます。

この他、電子書籍やインターネットTV、電子マネー、電気自動車バッテリーとそれに対応した自動車用OSの開発、電気駆動の自動運転飛行機の開発、害虫駆除用の農業用昆虫型ロボの開発、原発の再稼働、個人用証券取引所の設立といったことを述べ、これらを世界に輸出するというプランを北斗の拳サウザーの台詞やラピュタムスカの台詞などを交えつつ、提唱しています。特にすごいのは農業用昆虫型ロボです。これはアロンアルファを装備できるようにすることで兵器として転用できるとしています。具体的な運用方法は敵の兵器の様々な所を接着することで兵器を無効化するというものから、敵兵士のまぶたや指、肛門を接着して倒すというものまであり、特に敵兵士のまぶたの接着は「ムスカ」、指の接着は「ドラえもん」、肛門の接着は「エントリープラグ」という余りにも素敵すぎる作戦名も提示しています。

さらに「八戦一宇」とは「殺戮と貧困を世界から一掃するという日本の使命を実現するための具体的な実行プラン」とのことで「八戦」とは歴史戦、外交戦、経済戦、教育戦、福祉戦、行革戦、憲法戦、思想戦の8つを指しているとのことで、「座敷童システム」といった方法や日本語を全てローマ字化するという方法を提唱していますが、余りにも内容が多すぎるため、割愛します。ただ、余りにもすごく、サイトに記されている文章を読む価値は十分にあっただけに消されたのは残念なところです。

このような壮絶なことを訴えた蒲生健二ですが、得票数1,065票(総有効投票数158,198票、無効票1,817票)で7人中7位(定数5)という結果で終わってしまいました。