武田信弘の選挙公報(2015年埼玉県知事選)
今回は2015年8月9日に投開票が行われた埼玉県知事選に立候補した武田信弘を紹介します。
武田信弘は宮崎県知事選や鹿児島県議会選、春日部市議会選に立候補していた経験を持ち、埼玉県知事選にも前回と前々回に立候補している歴戦のインディーズ候補です(当ブログでも4年前の前回の埼玉県知事選の選挙公報を紹介しています。なお、当ブログの初紹介インディーズ候補であり、そういう意味でも特別なインディーズ候補と言えます)。
前回の選挙公報では「インターネットはマインドコントロールの道具では?!」という余りにも衝撃的すぎる見出しで人々を驚かせましたが、今回は「個人の利益だけを追いかけるのを止め、社会全体の最適化を目指しましょう」というきわめて真っ当な見出しとなっています。一方で選挙公報の細かい内容を見てみると、前回は自身のウェブページに関する話題をかなり謎な文章で紹介していましたが、今回は見出しとは逆に、前回より内容がすさまじくなっていました。
まず、密集している地域で人々が自由に振る舞えば混乱し、かえって自由の無い状態になり、へたをすれば互いに争い、喧嘩にさえなると述べ、見出しに対応した過度の自由を戒める真っ当な主張になっています。しかしながら、読み進めると、その雲行きは急速に怪しくなります。次の段落では「戦後、日本はアメリカに優遇されました。工業化させ、原発を造らせ、地震での事故で国土を放射能汚染させ、そこを世界中の国々で核廃棄物処分場として使うというアメリカ軍産複合体の意図があったのです」という、とんでもない陰謀論を提示しています*1。そして、地球規模で汚染が起きないように事故の規模は日本だけに収まるようにし、そのようにするためには「非常に大規模にウソをつく社会が必要」と述べ、ここでいきなり原発事故の話題から、このウソをつく社会が「おおがかりな県立高校入試不正が進められている原因です」と主張し、武田信弘が過去の選挙でも訴えていたライフワークともいえる県立高校不正入試に突然言及しています。
次の段落では「今では地域の人びとの3割程度は入試不正に関わってしまっているはずです」と述べ、この3割が入試不正に関わってしまっていることが「福島第一原発事故後に報道で大きく取り上げられる事件の大半はでっちあげ事件になっている」という色々とすごい主張を展開しています。そして、でっちあげの判断として、6月30日に起きた新幹線の焼身自殺を挙げ、矛盾することが多く見つかるからとしています。
最後にマニフェストを自身のブログに掲載していることを述べています。このマニフェストは今回の選挙公報で見られたような、すさまじい内容かと思いきや、災害対策や財政、少子高齢化などの様々な分野において、真っ当な政策を誠実に記しており、武田信弘がただの陰謀論者ではないことを示しています(アレな点があるとすれば小学校の英語教育に関する部分は元英語教師という経歴ゆえ、かなり文章を費やし、政策とは異なる技術的なことの説明をしている点でしょうか)。
NHK版、テレビ埼玉版、いずれも高校の入試不正や確証はないものの定期試験の売買がされていることを訴え、今の世間の課題はあらゆるものがインチキなものを正常な物に見せかけることであることを述べています。そして、STAP細胞事件は最初から仕組まれたもので論文不正をしている人に脅しをかけるのが目的であったとすさまじい事を述べ、さらには選挙公報でも主張した新幹線の焼身自殺事件の疑問点にも注目しています。このような発言の後にはスマトラ島地震はこれから地震が連続して起こるという警告であり、東日本大震災も警告をしていれば、原発事故が防げたという色々とすさまじいことを述べ、それに続き、地震衝撃波について述べています。
また、この他にも日本青年会議所が関わっている「e-みらせん」というものがあり、ここでは武田信弘の自己紹介や政策を紹介した3つの動画と埼玉県知事選の討論会の動画を見ることができます。まずは下に示した武田信弘メインの3つの動画ですが、高校の入試不正の他、地震衝撃波は対策が取れないので、地震衝撃波の存在が隠されているといった陰謀論や政見放送でも述べていた巨大地震が連続して起こることを複数の写真や資料を提示して、熱弁しています。しかしながら、埼玉県の魅力として、津波被害の可能性がないことや火山災害も発生しづらい事から関東の中では比較的、地震災害に強いとし、他県のバックアップになれる可能性を述べるなど、陰謀論的で異様な発言ばかりではない点は注目すべきところです。
次に下に示した討論会の動画に移りますが、15分辺りから始まる自己紹介で不正入試から選挙公報に書いた日本核廃棄物処分場計画、日本政府を超える権力の存在といった陰謀論を延々と述べるなど、最初からキレキレ具合を見せつけます。この他、重要課題や安心安全といった各政策のテーマに対しても、入試不正問題や地震衝撃波、地震の連続発生等を熱弁したり、社会保障の分野では他候補が様々な政策的なものを訴える中、腸内環境に言及し、乳酸菌製剤の重要性について訴えるなど、様々な所で素敵さを見せつけています。一方である程度、独自の解釈が見られるものの、地熱開発を進めることを欠点や課題点があることを含めながらも主張したり、若者の就職問題について聞かれた際には、若者はもっと起業をする気概が重要であると主張するなどのまともな事も述べており、司会者が武田信弘へ質問するコーナーでは、ほぼ地熱発電のみに注目しています。
このように今回も強烈な戦いを演じた武田信弘ですが、結果*2は以下のようになりました。前回の埼玉県知事選とは候補者数や構成も違い、単純には比較できないものの(特にインディーズ候補がもう1人いる点は不利に働きます)、前回より得票率は落ちてしまいました。とはいえ、それでも3万票以上獲得しており、今回も大健闘したと言えます。
上田 清司 (現職: 維新支持 民主県連支援) | 891,822(58.48%) |
塚田 桂祐 (自民県連推薦) | 322,455(21.15%) |
柴田 泰彦(共産推薦) | 228,404(15.00%) |
石川 英行 | 49,844(3.27%) |
武田 信弘 | 32,364(2.12%) |
*1:陰謀論ではありませんが、2011年の福島県議選に立候補した橘典雄は福島県を全世界の核廃棄物の処分場とし、10兆円の収入を挙げることを公約としていたりしています
*2:https://www.pref.saitama.lg.jp/e1701/chiji2015-kekka.html