中村勝の選挙公報(2012年衆議院選:大阪16区)
インディーズ候補と言えども、様々な条件下では善戦する事があります。良くある例としては現職の対立候補がインディーズ候補だけ、という場合で、この場合は現職への批判票が原則として全てインディーズ候補に入るため、高い得票率を示す事が見られます。
今回紹介する中村勝は2012年の衆議院選で大阪16区から立候補したインディーズ候補ですが、立候補者が4人出た大阪16区で得票率が10%を超えるという信じらないレベルで善戦しました。ちなみにこの中村勝は2011年11月27日に行われた大阪府知事選にも立候補しており、この時は立候補者7人中6位、得票率は0.61%しか獲得できていませんでした。今回、何故、劇的なまでに得票率が向上したのでしょうか。大阪府知事選の時より選挙の対象地区が狭くなり、地元の固定票に対して、投票総数が大きく減少したにしても、劇的すぎます。この理由は以前の大阪府知事選の状況と今回の状況を比較すると見えてきます。
まず、大阪府知事選の時の当ブログ記事を参照してください。中村勝は政治団体の代表をやっており、この政治団体の名前が何と「二十一世紀日本維新会」という、「維新の会」とかなり紛らわしい名称でした。そして、今回の衆議院選も「二十一世紀日本維新会」代表として立候補しました。この事は下に示した、今回の衆議院選の選挙公報からも分かります。
この選挙公報からは「第3極の代表」と大書きするだけではなく、21世紀という文字をかなり小さくし、有権者が「日本維新の会」の候補者と間違える事を狙っている可能性がかなり読みとれます。このような有力政党の候補者と混同させる手法は前例がないわけではなく、例えば、1983年の東京都知事選では、古賀裕也が「日本自由民主党」という自民党とは関係のない組織の公認候補として立候補し、自民党の候補者と有権者に間違わせ、19,000票以上獲得したりしていました。
しかしながら、今回の中村勝の場合、前回の大阪府知事選でもほぼ同様の事を行ったにも関わらず、惨敗した事や今回の得票率の増加が余りにも劇的すぎる事から単純に中村勝が「日本維新の会」の候補者であると有権者が間違えたから、というだけでは説明が難しくなります。では、今回の善戦は如何なる理由があるのでしょうか?その秘密は対立候補者にありました。下の表に大阪16区の候補者と所属政党、得票数、得票率を示します。
北側 一雄 | 公明(自民、維新推薦) | 86,464(50.81%) |
森山 浩行 | 民主 | 42,328(24.87%) |
岡井 勤 | 共産 | 23,652(13.90%) |
中村 勝 | 二十一世紀日本維新会 | 17,711(10.41%) |
この大阪16区では公明党の北側一雄が立候補していましたが、公明党は自民党や日本維新の会と選挙協力関係にあったため、この選挙区では自民党も日本維新の会も立候補者を擁立していなかったのです。一応、北側一雄は日本維新の会推薦である事は宣伝していたと思いますが、今回の衆議院選において、有権者が中村勝の事を「日本維新の会」の候補者と間違えた可能性は「日本維新の会」の候補者が擁立されていた前回の大阪府知事選に比べて、格段に高くなっていると考えられます。
このように今回の中村勝の善戦は対立候補者の顔ぶれが特殊であった事から「日本維新の会」の候補者と間違われ、「日本維新の会」の支持層の票が流れ込んだからであると考えられます。さて、このような予想外の善戦をした中村勝ですが、今度はいかなる選挙に立候補するのか、今後の動きが楽しみな所です。