Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

浜崎茂の選挙公報(2015年小松市議会選)

(この記事は同人誌『補導聯盟通信 2015年夏号』に掲載した文章を再編集したものです)

浜崎茂は元ボクサーで現在はうどん屋を経営しているという経歴の人物です。彼は石川県小松市のローカルながら2004年の2007年の小松市議会選に立候補した後、2007年の参議院選 石川県選挙区に立候補、さらには2011年の小松市議会選、2013年の小松市長選と参議院選 石川県選挙区、2014年の衆議院選 石川2区と立て続けに立候補をし、いずれもすさまじい選挙公報やポスターで話題になったベテランインディーズ候補です。なお、当ブログでは、2011年の小松市議選、2013年の小松市長選と参議院選 石川県選挙区、2014年の衆議院選 石川2区に立候補した際の選挙公報等を紹介しています。

actin.hatenablog.com
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このような強烈な選挙活動を行い、上記リンクで述べたように2014年の選挙の時は一躍、全国区的な知名度を得た浜崎茂ですが、2015年統一地方選でも、4月26日に行われた小松市議会選に4回目の挑戦をしました。この時の選挙公報を下に示します。

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この選挙公報では上記リンクで述べた2014年衆議院選の選挙公報とそれが話題になったことに言及しています。しかし、そこには「【大量虐殺】【皆殺し】公約をきっかけに、潔いと全国の話題になった浜崎茂の手書きポスター、手書き選挙カー政見放送、公報・・ ≪一歩抜きんでる生き方≫で紹介」と何か間違えていないか、と思わせる文章が書いてあります(とはいえ、耳目を集めるという当初の目的は十分達成しましたが)。そして、大川興業大川総裁にインタビューされたのが、よほどうれしかったようなのか、インタビューがYouTube等で見れることを紹介しています。

このように前回の衆院選での選挙活動について述べた後、政策を提示していますが、その政策は「『素晴らしい人物をトップに選ぶ国民になる』以外の政策は全部ゴミ!!」と強烈な文章が記されています。興味深い点として、この素晴らしい人物とは自分自身のことではなく、中村八千代という人物(フィリピンで貧困青少年を雇ってレストランを運営している人らしい)を指しているようで、この中村八千代を女性総理大臣にせよと主張しています。

そして、「12年間、小松市で落選を繰り返しているのはうわさ通りのキチガイなのか…?」という強烈な文章と「選管も認める不正な選挙はもう、終わりにしないといけない」と不正選挙を告発するような文章で終わっています。なお、この不正選挙の内容ですが、自分の票が隠ぺいされていたり、対立候補の票が水増しされているというような訴えではないようです。本人のブログによると有権者に候補者の情報を提示する方法に言及しています。ここで浜崎茂は全ての候補にとって公平なのは選挙公報だけで、例えばポスターであれば、選挙管理委員会が全候補者のポスターを全てのポスター掲示場に掲示すべきである、そうでなければ公正な選挙ではないという、ある意味、筋が通っていることを述べています。

選挙公報で「潔いと全国の話題になった浜崎茂の手書きポスター」と以前のポスターについて言及していますが、今回のポスターもとんでもないものになっていました。このポスターは下記のrukaruruさんのサイトで見ることができますが、何と90°回転した横向きの状態で掲示されていたのです。また、自分の名前が手書きで大きく書かれているほかには「全国で人気となった浜崎茂の手書きポスター」という文章が書かれており、ここでも前回の衆議院選で耳目を集めたことを記しています。

rukaruru.hatenablog.com

このように今回も強烈な選挙活動を展開した浜崎茂ですが、得票数361票(総有効投票数54,908票、無効票667票)で28人中28位(定数22)で落選という結果に終わってしまいました。

武田完兵の選挙公報(2017年、1989年東京都議会選 台東区選挙区、2015年台東区長選)

今回は2017年7月2日に投開票が行われた東京都議会選 台東区選挙区の武田完兵を紹介します。武田完兵は今回が初挑戦ではなく、2015年の台東区長選に立候補し、下に示したような強烈な選挙公報の他、コピー機で刷ったと思われる10種類以上のポスター、仙人のような風貌で局所的に話題になりました(この時は345票で最下位に終わっています)。

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このように前回は区政に挑戦しましたが、今回は東京都議会選という都政に挑戦しました。まず、今回のポスターですが、コンビニのコピー機で印刷*1された多種多様なポスターは健在でした。




また、「武田」と大きく書かれたポスターが選挙戦の後半に現れましたが、これは後述する演説会での発言によると、ポスターを遠くから見たところ、よくわからないとのことで急遽、「武」と「田」の二文字をコピー機で拡大して、今まで貼ったポスターの上に貼り付けたという事情があります(これはポスター掲示場には自分のポスターを1枚だけ貼ることができるというルールに触れる危険性を秘めています)。

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さて、今回の2017年の都議会選の選挙公報を上に示しました。こちらもポスターと同様に強烈な印象を見る者に与えます。これらの手書きでびっしりと書かれた文章を読み解いてみましょう。

まず、最初に「団塊世代と以上には美濃部都政の様な先進的福祉政策を行う」と記載されており、高齢者福祉政策を訴えています。その次には「国より先の自治体行政を子供の為 区市町村に行う」と文章的に少し謎ですが、子供のためになるような政策も実行しようとしていることが分かります。そして、この後に突如、MXテレビの都政出前講座に消費者団体の一員として出演したことを述べています。さらにかなり昔から都政には関心があったことを示すような話として、鈴木都知事時代にモニターをしていたり、議会の傍聴をしていたこと、青島都知事時代でもイベントで質問したことを述べています。そして、鈴木都知事時代というかなり昔から都政への意欲があることを語った後に「都政に対してはゆりかごから墓場までの策を」と始まり、安心安全の町を作ることや都民の尊重、公正な行政を行うことを色々と記載しています。

このように意気込み等を述べた後に公約を述べています。ここでは4年の任期を全うすると述べた後に突如「都が墓地を作ります(当家は八柱です)」となぜか自分の家の状況を述べて、都営墓地建設を訴えています。さらにその次には「私の信念」という項目がありますが、むしろこれは信念より公約的なものになっており、公約の前に信念を述べていたこともあり、文章の配置を間違えたのでは可能性があります。この「信念」に記載されている政策ですが、浅草橋駅に駅ビルを建てること、隅田川に歩道橋を架けることを訴え、商店街の復興を訴えています。また、前述したような「ゆりかごから墓場まで」の政策の充実を訴えています。そして、ここで今まで政策を述べていたのに、突然自身のプロフィールを記載しました。ここでは1947-59年の安井都知事時代にくじで与えられた家に今でも住んでいることや後述するリヤカー楽団をしていたこと、さらに驚くべきことに生活保護者であることや都議選は2回目の挑戦であることを述べています。この最初に挑戦した都議選は1989年の時で、この時の選挙公報を発見しましたので、下に示します。

写真を見てみると、今と全く違う雰囲気を漂わせている他、この時は武田寛という名義で立候補しています(この名義の違いについては後述します)。また、手書きではなく、活字で読みやすいスタイルになっています。内容としては生活者のための政治を行うことや健康で安全な環境、社会福祉の充実、消費税の廃止、面白いところとしては墨田川や神田川の水上利用整備というのが挙げられます。そして、当選後には民社系会派や社会民主連合に参加すると宣言しています。さらに最後には驚くべきことが記載されています。それは推薦者という項目がありますが、何とそこには民社党の国会議員であった麻生良方の息子で新宿区議の麻生輝久と保谷市議の山本一司という現職の区議と市議の名前が記載されているのです。なお、この時の選挙結果ですが、1,129票で残念ながら最下位に終わっています。

今回の都議選の話に戻りますが、投票日前日の7月1日に武田完兵の地元の浅草橋にある台東育英小学校で演説会を行いました。この演説会を見てきましたので、この時の様子も記します。

まず、会場前にたどり着くと、武田完兵の選挙カーである自転車が止まっており、この小学校で自分の演説会をしていることが示されていました。

そして、会場に入るとすでに会場には何人かの人がいました。この聴衆には私の知っている方々もいましたが、それ以外にも驚くべきことに地元の方と思われる人が何人かいました。

写真でも仙人のような風貌で強烈なインパクトを与えますが、生で見るとそのインパクトは半端ないものがありました。このような強烈なインパクトからどのような話が飛び出すのかと思われましたが、その内容は実に真っ当で地元の振興や歴史を考えていました。

まず、選挙公報中でも述べた浅草橋の振興策です。浅草橋駅前にはヒューリックのビルがあるのですが、このビルは台東区の区有地であり*2、区との共同事業で建設されました。このビル建設に関して、特に他の会社と競合しなかったことから、ヒューリックが台東区と何か関係があるのではという疑惑の追及から始まり、このビルが浅草橋振興、具体的には駅利用者を増やすことにあまり役に立っていないことを指摘し、ビルを改善することを提案しました。具体的にはもっと一般の人が利用できるテナントを入れ、浅草橋駅と接続した駅ビルにするとのことです。私も実際にこのヒューリックのビルに行ってみましたが、イベントホールや貸会議室、オフィスが中心で、一般の人が利用するようなテナントがほとんどなく、また、駅とは道路を挟んで向かいにあるものの、ビルと駅が接続されておらず、この指摘は的を得ています。武田完兵は浅草橋に魅力的な駅ビルを建てて、秋葉原や両国に用事のある人がこのビルに寄るために浅草橋で降りて、本来の目的地には歩いて行くくらいにしたい、また両国へのアクセスをよくするために橋を架けたいと意気込みを語りました。

この地元振興策に対しては、非常に熱心で、浅草橋と浅草を歩いて、楽しめるような街づくりをしたいことを述べたほか、浅草橋から浅草の辺りは全て浅草の範囲なのに、地名に浅草という冠がなくなってしまったことを「神田XX町」という地名がたくさんあることと比較して、訴えました。

また、学校の統廃合についても苦言を呈しています。具体的には会場となった台東育英小学校を挙げ、育英小学校という名前で明治時代から100年以上の歴史があったのに、統廃合し、台東育英小学校と名前を変更したことでその歴史が絶たれてしまったことを挙げ、なぜ名前を変更する必要があったのかと述べていました。

そして、政策以外にも自身の詳細なプロフィールを演説会では聞くことができました。まだ、前述した名前の件ですが、武田完兵、武田寛とも通称であり、本名の姓は別にあるようです。また、経歴も述べましたが、20才からピアノやクラリネットを始め、キャバレー等で音楽を演奏する仕事をしていましたが、カラオケが出たことで一気に仕事がなくなったとのことでした。家族からの援助で生活していたそうですが、2000年頃にリアカーに機材等を載せ*3、路上演奏を開始。この路上演奏は結構人気があったようで、本人曰く、通行人からアルトサックスをもらったことがあるとのことでした。しかし、この路上演奏は石原都知事時代から取り締まりが厳しくなり、リアカーを使っていたことから、2回駐車違反の切符を切られ、都のヘブンアーティスト制度にも落ち、路上演奏は廃業したことを述べました。また、政治活動に関しては選挙公報に記載したように昔の都議会を傍聴していたことや議員と交流していたことを述べ、1989年の都議選以前にも台東区議選に4回も立候補していたという衝撃の事実を述べました。なお、これらの選挙も全て最下位であったようで、本人曰く、最下位落選回数の記録を作りたいという豪気なことも述べています。

収入面に関しては、家族からの援助があったとのことで援助してもらったお金を株にプールし、少しずつ売って生活していました。しかしながら、そのお金も尽き、路上演奏も警察の取り締まりが厳しくなったことで廃業、生活保護を受けたものの、選挙に出たいとの一心で毎日節約をして、供託金を貯めるという苦難の道を歩んでいます。ただ、本人はこれを苦難とは感じていないようで、生活保護を受けていただけの時はテレビを見ているばかりで不健康であったのが、選挙に出たところ、自由に活動できて、実に楽しく、色々な人と話もでき、健康になったと述べています。

具体的な選挙活動については、区役所で立候補届出を行った後、区役所周辺からポスター貼りをスタートし、自転車でポスター掲示場を巡りながら、連呼をしていたようです。本人曰く、本格的に長く話をしたのは2回程度ですが、連呼していた時の内容は地区ごとにその地区に適した内容に変えていたようで、しっかりと選挙活動をしていたことが分かります。

さて、このように選挙活動を行った武田完兵ですが、686票で今回も最下位落選してしまいました。しかし、2019年に予定されている次の台東区長選への意欲を示しており、今後の活動が期待されます。

*1:ポスターには印刷所を記載する必要があります。このため、コンビニのコピー機で印刷されたことがポスターに記載されていました。

*2:福井中学校の跡地

*3:キーボードの録音機能を使い、演奏を録音させて、それに合わせてクラリネット等を吹くというスタイルで(本人曰く「楽団ひとり」)、キーボードやアンプ等を搭載していたそうです

2017年夏コミ新刊の訂正

2017年の夏コミ(C92)にて頒布いたしました「補導聯盟通信 2017年夏号」に一部誤記がありました。大変申し訳ございません。
訂正事項に関しては以下の通りとなります

*P.12 2段目「◆国を巻き込んだ法改正」の4行目
誤:議会を多数を握った
正:議会で多数を握った

*P.15 2段目17行目
誤:公明等
正:公明党

*P.15 2段目24-25行目
誤:自民、社会、民社の三党
正:自民、社会、公明の三党

*P.18 3段目4行目
誤:全会一致で決定したひと
正:全会一致で決定したこと

*P.32 ◆高橋しょうご
誤:論旨…2点 独自性…1点 声調態度…8点 計11点
正:論旨…4点 独自性…3点 声調態度…8点 計15点