Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

選挙ドットコムさんに寄稿しました(テーマ: 3日町長事件)

選挙情報サイトの選挙ドットコムさんに以下の記事を寄稿しました。

go2senkyo.com

この記事は地方自治体の首長が自ら辞職して、辞職に伴う選挙で当選した場合は任期は選挙がなかったものとして扱うという公職選挙法の規定により、選挙後の任期が3日間しかなかった町長の話です。

なお、今回の記事中で紹介できなかった補足情報です。

まず、この下郷町ですが、この桜木町長が当選する前の町長選は僅か8票差で町長が決まっており、かなり町の対立は激化していたりしていました。

そして桜木町長のリコール投票が1986年11月の町長の任期満了直前に設定された理由ですが、これは1985年1月にリコール請求の署名を集めて、提出したものの、町の選挙管理委員会が署名に重複があるという理由でリコール請求を認めず、裁判にもつれ込み、リコール請求認定まで約1年かかったという事情があったりします。

さらにメインの選挙の補足です。今回は幸いにも(?)任期切れの前に投票日を設定できたものの、地方自治体の首長の辞職に伴う選挙の投票日が辞職した首長の本来の任期満了日後に設定され、その選挙に辞職した首長が当選してしまった場合、当選しても任期が残っていないとされ、首長に就任することはできなかったりします(当然、このようなケースは今まで皆無です)。

また、もう1つ、今回の選挙で起きた面白い事例として、任期満了に伴う選挙は基本的に任期満了前の30日以内に行うことが公職選挙法で定められていますが、今回の2回目の選挙の様な任期満了後でないと選挙が実施できないというケースが想定されておらず、この時は死亡や辞職等で首長が欠けた場合の規程を準用していました。

そして、最後にこの桜木町長のその後ですが、収賄罪の裁判は最高裁までもつれ、1990年に執行猶予付き懲役刑と追徴金の判決が確定したものの、公民権が停止されなかったため、2001年に本当に辞職するまで、村長の座に君臨しつづけていました。

なお、今回の参考文献情報は以下の通りです。

・e-Gov 法令データ提供システム
・町長汚職に揺れる福島県下郷町, とうほく財界, 1984, 10(10), 29.
・肉薄レポート 桜木左久雄町長逮捕に衝撃走る下郷町 背景に根深い町長派・反町長派の対立, 財界ふくしま, 1984, 13(10), 150.
・菅原征彦, 揺れる下郷町 異例づくめの福島県下郷町長選, 地方自治ジャーナル, 1987, 8(98), 26.
汚職桜木町長 リコールに先手 辞職願を提出 福島・下郷町, 朝日新聞, 1986-10-05 朝刊, 23.
・リコールに肩すかし 辞職前町長がまた立候補 福島・下郷町, 朝日新聞 1986-11-04 夕刊, 14.
・西野芳明, 不可解の極み 被告町長再出馬 福島・下郷町, 読売新聞, 1986-11-04 朝刊, 9.
・三日天下町長 汚職-再選-任期12日まで, 毎日新聞, 1986-11-10 夕刊, 10.
・リコール拒み辞職の町長 出直し選挙で当選 任期わずか3日間 福島・下郷町, 朝日新聞, 1986-11-10 夕刊, 15.
・"三日町長"に懲役2年求刑 福島の汚職事件 任期切れの日, 毎日新聞, 1986-11-12 夕刊, 10.
・西野芳明, "三日町長"第2ラウンド 町民意識はどう変わる, 読売新聞, 1986-11-21 朝刊, 9.
・3日町長 任期終え再び出馬 福島・下郷町, 朝日新聞, 1986-11-25 夕刊, 18.
・"3日町長"また当選, 毎日新聞, 1986-12-01 朝刊, 22.
・大友君郎, "三日町長"三選の背景, 読売新聞, 1986-12-02 朝刊, 9.
・高橋俊一, 記者の目 「三日町長」は日本の縮図 福島県下郷町汚職事件, 毎日新聞, 1986-12-13 朝刊, 4.
・"三日町長"に有罪「控訴する 辞めぬ」, 朝日新聞, 1987-03-12 朝刊, 23.
・"三日町長"再び有罪 福島・下郷の土木汚職, 朝日新聞, 1988-08-04 朝刊, 26.
収賄罪で有罪確定の桜木町長が4選 福島・下郷町, 朝日新聞, 1990-11-19 夕刊, 18.
・桜木左久雄町長が無投票6選 下郷町長選/福島, 朝日新聞, 1998-11-11 朝刊 福島版.
桜木町長が辞職願提出, 朝日新聞, 2001-08-22 朝刊 福島版, 27.
・桜木左久雄氏 死去, 朝日新聞, 2001-11-16 朝刊 福島版, 31.