Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

ハーバー・ビジネス・オンラインさんに寄稿しました(開票所での騒乱事件)

ハーバー・ビジネス・オンラインさんに以下の記事を寄稿しました。

hbol.jp

今回は開票所で起きた騒乱、具体的には群衆が開票所になだれ込み、めちゃくちゃにしてしまった事例や開票所の外に群衆が集まり、投石が行われた事例、果ては群衆が投票用紙の搬入を阻止し、それらの票を棄権扱いにしてしまった事例を紹介しています。

なお、補足情報ですが、1991年の鹿児島県の伊仙町長選は選挙管理委員会が絡んだ不在者投票の不正が発覚しており、極めてとんでもない選挙になっていたりします。これは同人誌でまとめて取り上げるくらいにはすごい選挙で、もしかしたら近日中に同人誌の形でまとめるかもしれません。

今回の参考文献情報は以下の通りです。

・ついに乱闘さわぎ もめた和歌山の開票所, 朝日新聞 1959-05-02 朝刊, 11.
和歌山市長に高垣氏 堂々、四選の栄誉, 朝日新聞 1959-05-02 朝刊 和歌山, 12.
・選挙史にまたも汚点 乱闘、開票ストップ騒ぎ, 読売新聞 1959-05-02 朝刊 和歌山, 12.
・"津軽選挙"開票所に乱入 投票箱ひっくり返す 中里町 選管ミス怒り五百人, 読売新聞 1975-04-28 朝刊, 10.
・開票所で傍聴人騒ぐ 「投票率が発表と違う」 中里町長選 五百人がヤジ、怒号, 東奥日報 1975-04-28 朝刊, 15.
・険悪な状態続く 中里町長選挙騒ぎ, 東奥日報 1979-04-28 夕刊, 1.
・中里町長選開票所乱入 悪知恵比べが最悪事態に, 朝日新聞 1975-04-29 朝刊 青森, 16.
・中里町長選 やり直し 町選管が確約書出す, 東奥日報 1975-04-29 朝刊, 1.
・法的根拠のない確約書 中里町 再選挙認められず, 東奥日報 1975-04-30 朝刊, 1.
・選管委長また”雲隠れ” 町長ゼロの中里町 八方ふさがりの状態, 朝日新聞 1975-05-01 朝刊 青森, 16.
公選法「騒じょう罪」適用も 中里町長選 特捜本部が追及, 東奥日報 1979-05-01 朝刊, 13.
・中里 塚本町長当選を告示, 東奥日報 1975-05-02 夕刊, 1.
・厳戒下 塚本氏に当選証書 中里町の町長選挙, 東奥日報 1975-05-03 朝刊, 1.
・ドキュメント 中里騒動の8日間, 東奥日報 1975-05-03 朝刊, 12.
・伊仙町長選 一気に過熱 不在者投票めぐりトラブル, 南海日日新聞 1991-04-17 朝刊, 7.
・伊仙へ機動隊派遣 町長選のトラブル防止へ, 南海日日新聞 1991-04-18 朝刊, 9.
・機動隊11人が来島 伊仙町は厳戒態勢, 南海日日新聞 1991-04-19 朝刊, 7.
・伊仙町長選開票遅れる 盛岡、樺山氏が接戦, 南海日日新聞 1991-04-22 朝刊, 1.
・確定投票の発表…途端に投石 過熱する徳之島・伊仙町長選【西部】, 朝日新聞 1991-04-22 夕刊, 7.
・伊仙町長に樺山氏 盛岡氏に104票の差, 南海日日新聞 1991-04-23 朝刊, 1.
・混乱続く伊仙町 投石や座り込み 役場へ乱入騒ぎ, 南海日日新聞 1991-04-23 朝刊, 6-7.
・選挙無効を告示 伊仙町選管、事務妨害など理由に, 南海日日新聞 1991-04-24 朝刊, 1.
・「選挙無効」新たな”火ダネ” 町政マヒ状態に, 南海日日新聞 1991-04-24 朝刊, 6-7.
・混乱、矛盾の会見 選挙の確定はしてない 当選の告示早急にする 伊仙町長選, 南海日日新聞 1991-04-25 朝刊, 1.
・「当選人告示」を拒否 伊仙町長選 選管長、前言翻す, 南海日日新聞 1991-04-28 朝刊, 1.
・選管書記長ら3人を逮捕 伊仙の詐偽投票事件 捜査、一気にヤマ場へ, 南海日日新聞 1991-05-15 朝刊, 1.
・吉見選管長に逮捕状 伊仙町長選不正投票事件, 南海日日新聞 1991-05-30 朝刊, 1.
・樺山町長誕生へ 鹿児島・伊仙町(NEWS三面鏡)【西部】, 朝日新聞 1992-10-12 夕刊, 10.
・きょう、当選人告示か 伊仙町 新・選管委4人を選任, 南海日日新聞 1992-10-14 朝刊, 7.
・1年半ぶりに新町長誕生 伊仙町選管、当選人を告示, 南海日日新聞 1992-10-15 朝刊, 1.
・伊仙町長選 無効確定 通知後50日以内に出直し選挙, 南海日日新聞 1993-10-01 朝刊, 1.
・伊仙町へ機動隊派遣決定 けさ、27人が現地入り, 南海日日新聞 1993-10-25 朝刊, 7.
・機動隊第一陣 現地入り 伊仙町やり直し町長選で, 南海日日新聞 1993-10-26 朝刊, 7.
・里井、樺山氏が立候補 やり直し伊仙町長選, 南海日日新聞 1993-10-27 朝刊, 1.
・やり直し伊仙町長選 滑り出し、極めて平穏, 南海日日新聞 1993-10-27 朝刊, 7.
・”失職町長”が当選 やり直し選挙、14票差 鹿児島・伊仙町, 朝日新聞 1993-11-02 朝刊, 31.

デモクラシータイムスさんの番組に出演しました

デモクラシータイムスさんのインターネット番組に出演させていただきました。

www.youtube.com

今回はインディーズ候補などの様々な選挙報道において高名で、私が尊敬しておりますフリーランスライターの畠山理仁さん(https://twitter.com/hatakezo)のコーナーにゲストとして出演し、拙著「ヤバい選挙」について、かなり長い時間お話しさせていただきました(「ヤバい選挙」については下記記事を参照して下さい)。

actin.hatenablog.com

「ヤバい選挙」の9つの章のうち、1963年の東京都知事選の候補者が戸籍上死亡していた事件、選挙を目的とした架空転入の事件、1986年の参議院選聴覚障害で声を出して話すことができない人が立候補した際に起きた「無言の政見放送事件」を詳しく紹介しております。

1時間弱と長めですが、見ていただけますと幸いです。

上野竜太郎の選挙公報(2015年千葉県議会選 花見川区選挙区)

(この記事は同人誌『補導聯盟通信 2015年夏号』に掲載した文章を加筆、再編集したものです)

ニートとは働く意思もなく勉強の意思もない人とされていますが、現代日本ではしばしば単なる無職のことを馬鹿にする(あるいは自嘲的に自らニートと称する)言葉として使用されます。基本的にニートとなってしまう理由は様々なものがあり、一概に言うことはできませんが、例えば仕事をしていたものの、給与も安く、仕事が激務かつ企業側に労働法の遵法意識がなかったり、企業側の要求事項が高すぎたり、過度な対人関係スキルの要求があったりして、精神的身体的に疲弊してしまった場合や求職活動中に様々な所から断られ、自己肯定感を激しく損ない疲弊してしまった場合などもあります。ただ、働かないと一人前ではないという世間の風潮故にニートとされている人たちはこういった事情が考慮されず、不当に貶められている感はあります。 このようにどちらかといわなくても、世間的には不利な肩書きであるニートを名乗って選挙に立候補した候補者がいました。その人物は2015年4月3日に投票が行われた千葉市議会選 花見川区選挙区に立候補した上野竜太郎です。本人のツイッターにそのポスターが掲載されていますが、単に「上野竜太郎 ニート 25歳」のみで、この潔さにはもう脱帽という言葉以外がない感じです。

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また、上に選挙公報を示しました。「中学生の時から合計10年引きこもっていました」とその引きこもり歴がかなり長いことを示しています(なお、本人のツイッターからは職歴があることは示唆されてます)。しかしながら、選挙という場では不利になりそうなこの経歴を「この国の政治家が誰一人として経験していない」とし、「私には引きこもっている人間の気持ちが分かります。友達のいない、恋愛経験のない人間の気持ちが分かります。人生の岐路から外れも毎夜毎夜、自殺を考える人の気持ちが分かります」と自分しか持っていない視点として、他の候補とは違うという視点に変えています。そして、引きこもりが60万人いて、この60万人の助けになりたいという旨を述べています。そして、「私は、選挙に立候補した引きこもりです。私は、ポスターを張るために選挙区を駆け回る引きこもりです。私は、胸を張り、声を張り、堂々と演説する引きこもりです。もし、皆さんのなかに「こんな人間にも活躍の場所がある」とお思いになる方がいらっしゃいましたら、この上野竜太郎に一票を」とかなりよい文章で有権者に訴えています。最後には字が小さいことをお年寄りに詫びつつ、読んでくれたことの感謝を述べ、最後は千葉市花見川区のダメ人間でした」という文で締めています。

このある種、衝撃的なポスターと選挙公報はネットで話題を呼びました。そして、上野竜太郎はツイッターのアカウントを有しており、ここで積極的に情報を発信していました。恐るべきことに当初フォロワーが6しかいなかったのが、選挙終了後には1万5千を超えるという状態となりました。このツイッターでは選挙活動について発信しており、様々な人と出会っていますが、個人的にはおばあさんと千葉市の未来を語っていたら、「野菜の保存方法」についての話題となり、キュウリや生シイタケの保存法を教えて感謝されたという話が良かったと思います(アルバイトの経験が生きているらしい)*1

上野竜太郎は具体的な政策は延べなかったものの、特に若者関係では活発で人生がある程度うまくいっている層ばかりをターゲットにしている候補が多い中、このような引きこもりや人生がうまくいっていない人、決して活発ではないタイプに対する視点を持ち、そのような層を代弁するような候補者は極めて珍しく貴重な存在と言えます。様々な人の代表が出るのが代議制民主政治の基本であることからも、個人的には非常に好感が持てた候補者です。 結果としては残念ながら落選したもの、得票数1,399票(総有効投票数59,975票、無効票1,047票)も獲得し、15人中12位(定数10)と大健闘をしました(なお、最下位当選者は3,081票なので、結構及ばない気はしますが、全く後ろ盾がなく、初選挙でこれはなかなかと思われます)。

なお、個人的には継続した活動を行い、代表として、議会に出ることを期待したいところですが、今のところ、特に次の動きもなく、本人のツイッターも停止状態となっています。