Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

デモクラシータイムスさんの番組に出演しました

デモクラシータイムスさんのインターネット番組に出演させていただきました。

www.youtube.com

今回はインディーズ候補などの様々な選挙報道において高名で、私が尊敬しておりますフリーランスライターの畠山理仁さん(https://twitter.com/hatakezo)のコーナーにゲストとして出演し、拙著「ヤバい選挙」について、かなり長い時間お話しさせていただきました(「ヤバい選挙」については下記記事を参照して下さい)。

actin.hatenablog.com

「ヤバい選挙」の9つの章のうち、1963年の東京都知事選の候補者が戸籍上死亡していた事件、選挙を目的とした架空転入の事件、1986年の参議院選聴覚障害で声を出して話すことができない人が立候補した際に起きた「無言の政見放送事件」を詳しく紹介しております。

1時間弱と長めですが、見ていただけますと幸いです。

上野竜太郎の選挙公報(2015年千葉県議会選 花見川区選挙区)

(この記事は同人誌『補導聯盟通信 2015年夏号』に掲載した文章を加筆、再編集したものです)

ニートとは働く意思もなく勉強の意思もない人とされていますが、現代日本ではしばしば単なる無職のことを馬鹿にする(あるいは自嘲的に自らニートと称する)言葉として使用されます。基本的にニートとなってしまう理由は様々なものがあり、一概に言うことはできませんが、例えば仕事をしていたものの、給与も安く、仕事が激務かつ企業側に労働法の遵法意識がなかったり、企業側の要求事項が高すぎたり、過度な対人関係スキルの要求があったりして、精神的身体的に疲弊してしまった場合や求職活動中に様々な所から断られ、自己肯定感を激しく損ない疲弊してしまった場合などもあります。ただ、働かないと一人前ではないという世間の風潮故にニートとされている人たちはこういった事情が考慮されず、不当に貶められている感はあります。 このようにどちらかといわなくても、世間的には不利な肩書きであるニートを名乗って選挙に立候補した候補者がいました。その人物は2015年4月3日に投票が行われた千葉市議会選 花見川区選挙区に立候補した上野竜太郎です。本人のツイッターにそのポスターが掲載されていますが、単に「上野竜太郎 ニート 25歳」のみで、この潔さにはもう脱帽という言葉以外がない感じです。

f:id:actin:20200813001331j:plain

また、上に選挙公報を示しました。「中学生の時から合計10年引きこもっていました」とその引きこもり歴がかなり長いことを示しています(なお、本人のツイッターからは職歴があることは示唆されてます)。しかしながら、選挙という場では不利になりそうなこの経歴を「この国の政治家が誰一人として経験していない」とし、「私には引きこもっている人間の気持ちが分かります。友達のいない、恋愛経験のない人間の気持ちが分かります。人生の岐路から外れも毎夜毎夜、自殺を考える人の気持ちが分かります」と自分しか持っていない視点として、他の候補とは違うという視点に変えています。そして、引きこもりが60万人いて、この60万人の助けになりたいという旨を述べています。そして、「私は、選挙に立候補した引きこもりです。私は、ポスターを張るために選挙区を駆け回る引きこもりです。私は、胸を張り、声を張り、堂々と演説する引きこもりです。もし、皆さんのなかに「こんな人間にも活躍の場所がある」とお思いになる方がいらっしゃいましたら、この上野竜太郎に一票を」とかなりよい文章で有権者に訴えています。最後には字が小さいことをお年寄りに詫びつつ、読んでくれたことの感謝を述べ、最後は千葉市花見川区のダメ人間でした」という文で締めています。

このある種、衝撃的なポスターと選挙公報はネットで話題を呼びました。そして、上野竜太郎はツイッターのアカウントを有しており、ここで積極的に情報を発信していました。恐るべきことに当初フォロワーが6しかいなかったのが、選挙終了後には1万5千を超えるという状態となりました。このツイッターでは選挙活動について発信しており、様々な人と出会っていますが、個人的にはおばあさんと千葉市の未来を語っていたら、「野菜の保存方法」についての話題となり、キュウリや生シイタケの保存法を教えて感謝されたという話が良かったと思います(アルバイトの経験が生きているらしい)*1

上野竜太郎は具体的な政策は延べなかったものの、特に若者関係では活発で人生がある程度うまくいっている層ばかりをターゲットにしている候補が多い中、このような引きこもりや人生がうまくいっていない人、決して活発ではないタイプに対する視点を持ち、そのような層を代弁するような候補者は極めて珍しく貴重な存在と言えます。様々な人の代表が出るのが代議制民主政治の基本であることからも、個人的には非常に好感が持てた候補者です。 結果としては残念ながら落選したもの、得票数1,399票(総有効投票数59,975票、無効票1,047票)も獲得し、15人中12位(定数10)と大健闘をしました(なお、最下位当選者は3,081票なので、結構及ばない気はしますが、全く後ろ盾がなく、初選挙でこれはなかなかと思われます)。

なお、個人的には継続した活動を行い、代表として、議会に出ることを期待したいところですが、今のところ、特に次の動きもなく、本人のツイッターも停止状態となっています。

角田統領の選挙公報(2005, 2009, 2013年東京都議会選、2015, 2019年瑞穂町議会選)

(この記事は同人誌『補導聯盟通信 2015年夏号』に掲載した文章を加筆、再編集したものです)

今回、紹介するのは、2015, 2019年の東京都の瑞穂町議会選*1に立候補した時の角田統領(つのだ とうりょう)です。後述するように角田統領は1990年代から瑞穂町ローカルながらも都議会、町議会選に立候補しているベテランのインディーズ候補です。

角田統領は本名ではなく角田豊治(つのだ とよはる)が本名となっています。後述するように過去、何度も選挙に立候補しており、「角田豊治」名義で立候補したことも複数ありますが、本名の読みを本名の「つのだ とよはる」とした他、「つのだ とうりょう」としていた選挙も確認されています。また、役場に「角田統領」、読みを「だいとうりょう」として届け出ているという話も存在しますが、こちらの詳しいことは不明です。

角田統領の政治的な活動が初めて記録されているのは1988年でした。1988年12月2日の朝日新聞 東京地方面で地元の瑞穂町の小学校の体育館の指名競争入札において、最初に落札した業者が直後に契約辞退をしたため入札をやり直したところ、落札価格が3千万円以上跳ね上がったということが報じられていました。このことで監査請求をした住民として、当時39歳の角田豊治の名前が見られました。

その後、角田統領は角田豊治名義で1995年の瑞穂町議会選に立候補していることが確認されています。この選挙では驚くべきことに定数18のところ18位につけていました。しかし、この選挙では17, 18位の候補者が当選に必要な法定得票数に届かず、落選してしまいました。この時の角田統領の得票数は103票で、法定得票数には74票不足していました。

1995年以降の角田豊治の選挙活動ですが、確認できている範囲では、2003年の瑞穂町議会選、2005年の東京都議会選 西多摩選挙区、2007年の瑞穂町議会選、2009年の東京都議会選 西多摩選挙区、2011年の瑞穂町議会選、2013年の東京都議会選 西多摩選挙区に立候補しており、いずれも落選しています。また、選挙活動とは異なりますが、2011年には代表を務めるNPO護民官」が隣人の間にトラブルを抱えていた知的障害の生活保護者に対し、「護民官」に居住しているマンションを贈与した上で、「護民官」が所有している別のマンションに転居させるということをめぐり、贈与の内容が不公平であるなどで裁判になっていたことが2011年6月17日の朝日新聞に記載されいます。

上に2005, 2009, 2013年の東京都議会選の選挙公報をそれぞれ上に示しました(瑞穂町議会選の選挙公報は過去の記録から発見することはできませんでした)。2005年の時は福生警察署の駐車場を増やす、捨て看板の規制強化や米軍横田基地の全面返還を求める様々な政策を掲げていました。しかし、2009年になると、2005年の時は「請願条例を制定し、請願の権利性を拡充する」程度しか記載がなかった請願権運動政策の拡充やオンブズマン制度について、半分程度のスペースを使っていました。また、2013年ではより請願権についてのスペースが広がってほぼ全てになり、それ以外の政策はわずかに「憲法改悪の危機」や「原発再稼働に反対し再生エネルギーを支援」となっています。このように年齢を経過するうちに請願権やオンブズマンに関することへの比重が大きくなっていることが分かります。

2015年の瑞穂町議会選の時の選挙公報を上に示しました。今まで角田統領は自らが設立した「大統領会」所属で立候補していたことがありますが、今回も大統領会所属で立候補しています。今回の選挙公報を見てみると、「公契約条例制定」「オンブズ(行政監察)条例制定」と日頃のオンブズマン活動に関係する政策を訴えていますが、2013年の東京都議会選の時と比較すると、半分程度とやや比重は小さくなっています。そして、残り半分は「多摩地方裁判所設置」「再生エネで原発ゼロ」にという政策を訴えており、今回も無難な選挙公報に仕上がっています。なお、結果ですが、得票数149票(総有効投票数11,756票、無効票176票)で17人中17位(定数16)でただ1人の落選者となってしまいました。

また、2019年の瑞穂町議会選の選挙公報を上に示しました。この時は大統領会ではなく、「日本請願権運動」という党派名で届出をしています。この「日本請願権運動」という党派名らしく、今回は選挙公報のスペースを全てをライフワークともいえる請願権についてのことのみ記載しています。また、選挙後の5月3日に講演会的なものをやるとの告知が記載されています。この時の結果ですが、得票数20票(総有効投票数13,034票、無効票164票)で19人中19位(定数16)で終わってしまいました。

また、この2019年5月3日に行われた講演会的なものに参加してきました。この講演会的なものは、角田統領のライフワークともいえる請願権やオンブズマン制度についての勉強会的なもので角田統領以外にも5人程度の支持者的な参加者がいたほか、支持者ではないものの興味を持って参加していた人もおり、なかなかの盛況になっていました。

*1:投票日はは2015年4月26日、2019年4月21日