Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

岩田たにいずみの選挙公報(2015年小山町議会選)

今回紹介する人物は2015年4月26日に投開票が行われた静岡県小山町議会選に立候補した岩田たにいずみという人物です。

基本的に選挙への立候補は日本国籍を有して、年齢を満たし、供託金を用意し(これが一番大変なのですが)、公民権が停止されているといった事情がなければ、過去に実刑を食らったといった経歴の人物でも立候補はできます*1

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上に岩田たにいずみの選挙公報を示しました。これを見てみると最初の方に「前科二犯の犯罪人」「再犯の恐れありと、目下保護観察中の身です」と驚くべきことが書いてあります。2015年の統一地方選で自らに前科があることをここまで明言した候補はこの岩田たにいずみ以外に確認することはできませんでした。

さて、このような本来であれば、選挙に不利になると思われる前科持ちという衝撃的な告白をした岩田たにいずみですが、それ以外の部分を見てみましょう。「こんなわたしでよかったら末席へでも座らせてください。古ぼけた小さな明かりですが一隅を照らして見せます」と哀愁漂いながらも意欲ある言葉を述べています。そして、88歳というかなりの高齢であることと前述した前科二犯保護観察中であること、さらに自らを「小山町の危険人物?」と称しており、続いて「自分では俯仰天地に愧じずと思っている厄介者です」と述べています。

このように自らのプロフィールを述べたあと、自分の尊敬する政治家として粛軍演説と反軍演説で有名な斉藤隆夫を挙げています。そして、信条として田中正造老子の言葉を引用し、政治家の行動をチェックする重要性を述べています。その後は政策公約に移りますが、「小山を日本一にする」と大きく出ており、そのためには30年計画が必要であること、教育や福祉の重要性を述べています。そして、最後に「老骨に鞭打ち、滅私奉公、是々非々に徹します」としています。このように前科を述べた以外は比較的普通の感じでしたが、この政策公約の下に「チェック」「カンシ」「カンサ」という柄のスーツを着て、「SOS」という柄のネクタイを締めた味のある感じのおっさんが「こら、たにいずみ たるんでるゾー」と言っている、なかなかすごいイラストが目につきます。

さて、この岩田たにいずみですが、調べてみると、前科以外にも実に面白い経歴であることが判明しました。まず、以前に小山町議会議員をやっていたという衝撃的な事実があります。また、この前科二犯もある特別な事情がありました。岩田たにいずみは付近の山に手作りの案内看板を多数設置するという活動を行っており、そのユニークで力の入った看板はハイキングが趣味の人達の中では比較的有名でファンの人達でそれらの手作り看板の写真展が開催されるほどだったようです。しかしながら、この活動が行政機関と衝突を招く事になります。2011、12年に小山町が設置した看板が間違っているとして、ペンキでバツ印を付けたり、のこぎりで切断するということをして、2回執行猶予付き判決を受けており*2, *3、これが選挙公報に記載していた前科二犯の実情であったようなのです(現在は執行猶予期間中のようで保護観察中というのもそういう事情があるものと思われます)。ただ、町が作成した看板はどうも本当に間違っていたらしく、町が岩田たにいずみの指摘を受け入れたという情報もあり、一概に岩田たにいずみが一方的に悪いという事情ではないようです(無論、器物損壊行為は罪に問われることべきです)。

このような自らを前科二犯であると告白した岩田たにいずみですが、得票数は314票(総有効投票数9,800票、無効票112票)で15人中15位(定数13)と健闘はしたものの落選という結果に終わりました。

なお、この岩田たにいずみですが、2017年に死去していたようです*4

*1:なお、議会選の場合はこれに追加してその選挙の選挙権を有する必要があります

*2:https://www.yamakei-online.com/journal/detail.php?id=1941

*3:https://www.fujinsha.co.jp/nishitan/iwatanews.html

*4:http://www.fujinsha.co.jp/2017/10/31/iwata-obituaries/