Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

東日本大震災と幻の選挙公報(2011年千葉県議会選 浦安市選挙区)

(この記事は同人誌『補導聯盟通信 2011年夏号』に掲載した文章を再編集したものです)

今回のテーマは『インディーズ候補』ネタではありません。東日本大震災と呼ばれる、マグニチュード9クラスの巨大地震とそれに伴う津波の被害はここ数十年においては空前絶後の災害であり、現在に至っても、様々な事象に大きな影響を与えています。2011年統一地方選はこの東日本大震災の後であり、統一地方選にも大きな影響を与えました。この影響の例は色々と挙げられます。例えば、常日頃には焦点になる事が少なかった防災問題が大きく政策としてクローズアップされましたし、エネルギー問題に関しても各地の選挙の焦点になりました。しかし、最もこの震災が今回の統一地方選に与えた最も大きな影響は予定通りの選挙の開催が不可能になった地域が存在したという事です。この選挙延期は『平成二十三年東北地方太平洋沖地震に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律』という法律が制定され、これにより、岩手、宮城、福島、茨城の4県の指定された選挙が延期になりました。

このように国が法的に選挙の開催を延期させた地域もありましたが、一地域が選挙の開催は不可能と判断して全ての選挙事務を拒否して、法によらず実質延期してしまった地域も存在しました。その地域は千葉県浦安市浦安市は大半が埋立地で構成されおり、それらの埋立地地震によって液状化現象を生じ、市に深刻な被害を与えました。この2011年統一地方選では浦安市は前半戦である4月10日には千葉県議会選を、後半戦の4月24日には浦安市議会選を行う予定でしたが、この被害状況を鑑みて、浦安市当局は千葉県議会選の浦安市選挙区の延期を千葉県に要求しました。しかし、千葉県はそれを認めず、千葉県選挙管理委員会によって予定通り浦安市選挙区を含めた千葉県議会選が告示されてしまいます。選挙が告示されたため、千葉県選挙管理委員会は立候補者の届出受付を含む各種選挙事務を行いましたが、浦安市内の投票所の開設や入場券の配布等の末端の事務を行う浦安市選挙管理委員会が事務作業を行わなかったため、選挙の投票が行われず、選挙結果は当選者無しになるという前代未聞の事態になったのです。その後、5月22日に千葉県議会選 浦安市選挙区の再選挙が行われ、無事、千葉県議会の浦安市選出の議員が決まりました。

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さて、この上に示した選挙公報は2011年の千葉県議会選 浦安市選挙区の選挙公報ですが、個性的なインディーズ候補は掲載されていません。しかしながら、この選挙公報はそれに匹敵する位、珍しい選挙公報だと思われます。告示日と投票日に注目してください。執行日と投票日が4月10日になっているのです。つまり、この選挙公報は投開票が行われず、当選者無しとなった千葉県議会選 浦安市選挙区の選挙公報なのです。この選挙公報は千葉県選挙管理委員会に千葉県議会選の選挙公報を請求した際に入っていたもので、この事から選挙公報の作成は県の選挙管理委員会が一括で行っている事を示しています。そして、選挙公報の配布は市町村の選挙管理委員会が行う事からおそらくこの選挙公報は印刷はされたものの、一般に広く配布されることなかった幻の選挙公報だと思われます。

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そして、上に示した選挙公報は5月の時の再選挙の時の選挙公報です。選挙公報を見てみると、4月の投開票が行われなかった選挙とは候補者の顔ぶれが異なる事が分かります。矢崎堅太郎と内田悦嗣という現職2名(厳密にはこの再選挙ではこの2名は元職扱いとなります。これは投開票が行われなかった4月の選挙は中止ではなく、選挙が行われた結果、当選者無しという扱いになっているからです)が出ているのは同じですが、4月の時の選挙に立候補していた武藤睦美が5月には立候補せず、4月の時には立候補していなかった三原利治が立候補しています。武藤睦美が再選挙に立候補しなかったのは2度選挙を続けるのは体力、気力、金銭面で問題があったとのコメントがあったようです。そういう意味では今回の再選挙で一番割を食ったのはこの武藤睦美ではないかと思われます。