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Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

映画「立候補」の感想

インディーズ候補をテーマにした映画という事で色々と話題になっていた『映画「立候補」』*1をようやく見る事ができましたので、今回はその感想を。一部、ネタバレありますので、ネタバレが嫌な方はここでUターンを。とはいえ、ネタバレする事で面白さが損なわれるかというと、そこまで損なわれるとは思いませんが。







インディーズ候補をテーマにした映画というと、メジャーどころの『ゆきゆきて神軍』以外では、私が見た事があるのは又吉イエスのドキュメンタリー映画だったりします。この又吉イエスの映画は青山学院大の大学祭で上映される予定であったものの、学校側から中止が命じられ、これに関して、又吉イエスが青山学院大を地獄の火の中に投げ込むという宣言をしたという曰くつきの映画だったりします。

さて、話を元に戻して、この『映画「立候補」』ですが、出てくるインディーズ候補は出演者欄にもあるようにマック赤坂羽柴誠三秀吉外山恒一、高橋正明、中村勝、岸田修と、一部、当ブログでも扱った事のある候補たちです*2。ちなみにパンフレットによると、又吉イエスに電話をしたものの、40分にわたる電話で撮影拒否されたとのこと。このメンバーは外山恒一を除けば、2011年大阪府知事選絡みの人選*3、映画の内容も大阪府知事選に焦点を当てています。今回、幸運な事にこの映画の制作兼撮影の木野内哲也氏の舞台挨拶を聞く機会があったのですが、これによると、最初は大阪府知事選に出たインディーズ候補全てをほぼ同程度に取り上げていたものの、あまり面白くなかった、という事でマック赤坂に焦点が当てられ、マック赤坂が主役の映画となっています。

そして、前述の舞台挨拶等によると、この映画のテーマ的な物としては、基盤もなく、負けると分かっていながら、300万円(供託金)という大金を出して、選挙に出て、国を変えようとするインディーズ候補たちを讃えるという所だそうで、確かにこの映画ではインディーズ候補たちが真剣に今の状態をどうにかしたいと考え、様々な手段で訴えていこうとする姿が描かれています。

特に秀吉やマック赤坂の様々な、時として奇矯に映る行動ですが、これらに関しても、知名度を売るため、と説明しており、秀吉が地盤看板カバンの3バンの中の看板に触れ、何であれ、話題にならないといけない、という趣旨の発言をした事やマック赤坂が歌っている時は人が来るけど、演説している時は人が来てくれない、という趣旨の発言が出てきて、これらの行動が戦略的なものである事を明らかにしており、伊達にこの二人は実業で成功を収めていないなと思わせます。また、高橋正明や中村勝がいかなる事を感じ、非常にまじめな動機のもとで選挙活動に打って出たか、そして、どのように選挙戦を戦ってきたか、という事も映画本編およびパンフレットのインタビューから見る事ができます*4, *5

一方で、この映画はインディーズ候補のそういう意味での素顔だけではなく、インディーズ候補の日常的、平時の姿も克明に映し出しています。例えば、高橋正明が選挙中に同じ中学の同級生に会えて喜んだり、娘に面白いお父ちゃんだったと言われたいと発言している事や中村勝が一人で育てている年の離れた娘を本当に大事にしていて、親子すごく仲の良い姿などが描写されます。

そして、この映画の実質的主役、マック赤坂に移ります。マック赤坂は映像が多い事から素顔を描写するという意味では特に顕著で、インディーズ候補を讃えるという本来の見方以外にも、マック赤坂の生態を克明に描写した記録映画としての見方も出来ます。まじめな部分やマック赤坂が作り上げたレアメタル商社のマックコーポレーションを継承した息子がどのように父親を感じているか、という良い話も出てくるのですが、決して、ポジティブな部分のマック赤坂だけではなく、ビールや紙パックの日本酒を演説活動の合い間に飲むマック赤坂の姿、大阪府知事選なのに京都の街に繰り出し、車道にいきなり飛び出して、他の車の進路を妨害しながら、バスの乗客にアピールしたり、交差点のど真ん中で突如踊り出すなど、名を売るにしても、あり得ない行動を突如取るマック赤坂の姿や、京都大の前で演説をしようとした際に学園祭をやっていたらしく、門の前でやる事をやめてほしいといった学生に対して*6、「就職できないようにしてやる」とスマイルのかけらもなく恫喝するマック赤坂の姿やハローワークロールスロイスの運転手を時給4000円で募集をかけたものの、採用後に2000円になったというネガティブなマック赤坂の姿も見る事が出来ます。

そして、この映画のクライマックスと個人的に感じた部分は2つあり、いずれも類似した部分です。それはマック赤坂がこの2011年の大阪府知事、市長選の最終日で維新の会の橋下徹(市長選)と松井一郎(知事選)の街頭演説をする支持者が集まっている場所に現れ、橋下徹松井一郎に向かって演説を始めた時とこちらも同様に2012年の衆院選秋葉原安倍晋三麻生太郎が街頭演説をする支持者が集まっている場所に現れ、演説をした時の2つです。これらに関しては一般的に我々が見られる情報では支持者側あるいは傍観者側からの発言や写真、映像程度ですが、この映画ではマック赤坂視点からの映像となっており、実に貴重かつ新鮮な切り口の映像が見れます。

これらの映像にいずれも共通する点は自ら相手の舞台に殴り込みに行っているとはいえ、スタッフが少なく、ほぼ一人のマック赤坂がそれぞれの群衆や対立候補陣営の関係者からすさまじいレベルの罵声やヤジ、恫喝の集中砲火を浴びせられる点です。しかし、商社で修羅場をくぐりぬけてきたせいなのか、天性のものなのか、マック赤坂はそのような状況でも悠然とした態度を崩さず、実に胆力が座っていると感じられました。特に秋葉原の方では安倍、麻生絡みで、日本国旗を持った大量のその手の右派の人々が集まっていた事は様々な情報から知っている人は多いと思いますが、大量の日本国旗を持っている彼らの「帰れ」コール以外にも、「ゴミ」、「売国奴」という、あり得ないレベルの罵声がマック赤坂に集まっている姿をマック赤坂の視点から撮影された映像は、映画を見ていた自分に対し、これらの罵声が浴びせられているかのような錯覚を覚え、なかなか衝撃的な映像でした。さらには、選挙活動には傍観的であったマック赤坂の息子の息子が秋葉原の際にはスタッフとして参加しており、いままでのインタビューではおとなしそうだった、彼が凄まじい口調で、マック赤坂に「売国奴」コールを挙げている大量の国旗を持った集団に一人で立ち向かっていく姿とその後ろでいつもの姿を崩さず、笑い声を上げているマック赤坂の姿という映像、しかも前述したようにマック赤坂視点の映像は本当に衝撃でした。

個人的にはこの『映画「立候補」』は極めて良い名作だと感じました。前述したようにインディーズ候補がいかに真面目な動機をもって、負けが分かっていると理解して、供託金という大金を積んでまで、選挙活動に身を投じている事がしっかりと取り上げ、讃えられており、インディーズ候補に興味のない方にもインディーズ候補の見方を大きく変える可能性が極めて高く、そういう意味で、ぜひ見ていただきたい映画だと思います。無論、インディーズ候補好きな方もインディーズ候補の素顔や特にマック赤坂に関しては、マック赤坂という人間が克明に描写されており、非常に貴重な映像と思います。ぜひ、次回作があるのであれば、見に行きたいと感じさせる映画でした。 


右の「(038)泡沫候補」は映画「立候補」の監督が書いた本で映画で取材した内容を書籍にした形の本になります。

*1:パンフレットによると"映画"も含めて、タイトルとのこと。これは事前運動などの公職選挙法との兼ね合いがあるようです

*2:当ブログでの各インディーズ候補の紹介内容についてはリンク先を参照。マック赤坂羽柴誠三秀吉高橋正明中村勝岸田修

*3:羽柴誠三秀吉当ブログで紹介したように立候補表明はしたものの、肺がんで立候補断念

*4:岸田修は取材したものの、ほぼ拒否に近い状態でした

*5:中村勝は以前、当ブログにて2011年大阪府知事選と2012年衆議院選大阪16区で立候補した時を取りあげています。中村勝は「二十一世紀 日本維新会」という団体を作っていて、2011年大阪府知事選の際には約100人いると報道されてましたが(当ブログの2011年大阪府知事選の記事参照)、この映画ではそのような組織の存在は描写されていません。木野内氏によると仕事上の付き合いの人が一応、所属している事になっているそうで、存在はしているらしいです

*6:選挙法的にはマック赤坂の演説は問題がなく、むしろやめるように言う事が問題となる