Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

くじびきアンバランス(2011年渋谷区議会選)

くじ引き。現代においては、福引とか三角くじとか、そういうイメージが強く、公職を選ぶといった事にくじが用いられるというイメージは非常に弱いですが、歴史的には古代ギリシャアテナイでは最高権力者である将軍以外はくじ引きで選ばれていましたし、日本でも室町幕府4代将軍の足利義持が後継者を決めないで死んでしまったため、義持の弟4人の中からくじ引きをして、次の将軍を決めたという事例がありました*1

当時における、くじでの決定というのは、神がその人物を選んだ、という風に認識されていて、ある程度は納得はされていたらしいのですが、さすがに現代において、総理大臣や国会議員をくじで選ぶ事が、ちょっとした議論になる事はあっても*2、大規模に議論される事は少ないのではないかと思います*3

しかしながら、公職選挙でくじが採用される、という事は皆無ではありません。公職選挙法第95条2において「当選人を定めるに当り得票数が同じであるときは、選挙会において、選挙長がくじで定める」*4と規定されています。そして、実際の選挙でもたまに同得票数となり*5、このようなくじによる決着が見られる事があるのですが、今回紹介するケースはこのようなくじで当選人を決定した中でも、極めて、レアなケースです。

くじ引きで当落逆転=得票同数の2氏−渋谷区議選

 東京都渋谷区選挙管理委員会は5日、昨年4月の区議選で、1票差で当落を分けた小柳政也氏=みんなの党=と松岡定俊氏=自民=について、改めて当選者を決めるくじ引きを行い、松岡氏の当選を決定した。小柳氏の1票を無効とする判断が先月確定し、次点の松岡氏と得票数が並んだため、公選法の規定に基づき、くじ引きの実施となった。これにより当落が逆転したことになる。 
 区選管は当初、小柳氏を1票差で当選としたが、松岡氏の申し立てを受けた都選管は、誰に投票したのか判別しにくい1票を無効票と判断、小柳氏の当選は無効と裁決した。これに対し、小柳氏は裁決の取り消しを求め提訴したが、東京高裁は請求を棄却。最高裁も先月29日付で、小柳氏側の上告を退けた。
 小柳氏は記者団の取材に対し、「仕方がない。これから今後のことを考える」と語り、松岡氏は「選挙がようやく終わった。気持ちを新たに頑張りたい」と強調した。(2012/06/05-17:37)

時事通信 2012年6月5日 17時37分 くじ引きで当落逆転=得票同数の2氏−渋谷区議選

これは最近の選挙の話ではなく、去年の4月の統一地方選の時に投開票が行われた渋谷区議会選の話です。何故、くじ引きまで、こんなに時間がかかったのでしょうか?このニュースを読めば分かるように、開票した時は同得票数ではなく、1票差であり、この時には1票多かった小柳政也に当選宣言が出されていたのです。しかし、この時に落選とされていた松岡定俊が不服申立をして、東京都の選挙管理委員会が票を調べ直しました。この際、小柳政也の票としてカウントされていた「こやなぎしずお」とひらがなで書かれていた票が無効と判断されました。この無効の根拠は「林しずお」という候補が同じ渋谷区議会選に立候補しており、どちらに投票したのか、区別がつかない、という物でした*6。そして、この裁定で同得票数なので、くじ引き、と素直にはいかなかったのです。

第1回口頭弁論 渋谷区議「1票」をめぐる訴訟

 ことし4月に行われた渋谷区の区議会議員選挙で1票差で当選した議員が、その後当選を無効とした東京都選挙管理委員会の裁決取り消しを求めた訴訟の第1回口頭弁論が、きょう東京高裁で開かれました。
 渋谷区議の小柳政也氏は1票差で最下位当選したものの、都選管による票の調べ直しで当選が無効とされました。これを受けて小柳氏は8月31日に提訴し、きょう意見陳述しました。都選管は「小柳氏の名字と他の候補者の名前」が記載された票を「混記されたもので“無効”」と判断したのに対し、小柳氏は「明らかに小柳と書かれていて、名字と名前が同じ重みという判断はおかしい」と主張しています。都庁で会見した小柳氏は「都選管が出てきて渋谷区民の1票を奪い取って、渋谷区選管の判断を簡単な文章で覆すことは上から押し付けているようにしか思えない」と述べました。
 次回の口頭弁論は今月22日に開かれ都選管の反論が出る見込みで、判決は来月中旬に言い渡される予定です。

TOKYO MX NEWS 2011年11月10日 第1回口頭弁論 渋谷区議「1票」をめぐる訴訟

小柳側は都選管の裁定を不服として、裁判で裁決取り消しの訴えを起こしたのです。しかしながら、この訴訟は棄却されてしまいましたが、それにめげずに最高裁にさらに訴えを行いました。このような事情があって、どんどんと長引いていってしまったのです。そして、ついに最高裁の決定が選挙の投開票が行われて1年以上経過した2012年5月末に下されたのです。

渋谷区議選 くじ引きへ 1票差当選の無効が確定

 昨年四月の東京都渋谷区議選で、次点と一票差で最下位当選した小柳政也氏(みんなの党)が、有効票のうち一票は無効票だったとして当選を無効とした都選挙管理委員会の裁決取り消しを求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は、小柳氏の上告を受理しない決定をした。
 小柳氏の敗訴が確定した。決定は二十九日付。小柳氏と次点だった松岡定俊氏(自民)が同じ票数となったため公選法の規定に基づき、くじ引きで当選者が決まる。渋谷区選管は三十一日に臨時の会合を開き、くじ引きの日程などを決める。
 小柳氏は当初、千百三十五票で最下位当選したとされた。しかし、一票差で落選した松岡氏が審査を申し立て、都選管は平仮名で「こやなぎしずお」と書かれた票について、「しずお」という名の他候補がいたことから無効票と判断した。
 当選の有効性を争う訴訟は高裁に提訴することになっており、一審・東京高裁は昨年十二月、問題の票について「いずれの候補者氏名を記載したのか判断しがたく、無効投票だ」とし、小柳氏の請求を棄却した。

東京新聞 2012年5月31日 朝刊 渋谷区議選 くじ引きへ 1票差当選の無効が確定

最高裁は都選管の決定を支持し、ついに小柳政也と松岡定俊は同得票数であり、当選人を決めるためくじ引きをする、と決まりました。

こうして、一番最初のニュースの所に戻るわけですが、ここで一つ、気になる点があります。くじ引き、とは言っても、どのようなくじであるか、という点です。実は公職選挙法上では「選挙長がくじで定める」と定めていますが、どういうくじにすべきか、という点に関しては、何も定めていません。くじの方式については、各選挙管理委員会にゆだねられていますが、今回のくじについては、このニュース動画に示されていました。

FNNニュースの動画

(記事全文はこちらを参照してください)

TBS News iの動画
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye5047458.html

この2つの動画を見てみると、神社のおみくじを引くのと似たようなシステムで1-10番の棒の中から1本取り出して、小さい数字を引いた方の勝ち、という思っていたより手の込んだシステムを採用している事が分かりました。それと、もう1つ、興味深い点として、FNNニュースの動画の方で、「本人引いても、誰が引いてもいいんですよ。指名しなきゃいけないんですよ、わたしの方で」、という発言があり本人が引く必要はなく、代理人を立てても構わない、という点でした。これは渋谷区選挙管理委員会が定めたくじ引き方法ですが、よその自治体のくじ引きのルールがどのようになっているか、というのは結構興味深いテーマな気がします。

それと、今回の渋谷区議会選とは関係がなく、余談ですが、FNNの動画の方で、2012年6月10日に投票が行われる港区長選挙において、あらかじめ書いてある候補者名にスタンプを押す、記号式投票が採用される、というニュースは結構興味深いですね。公職選挙法上では地方選で記号式投票は投票日の投票であれば、基本的にやって良い事になっていますが、採用例が少ないので、結構貴重だと思いました。

*1:ちなみにこの時のくじはインチキで、後継者はあらかじめ決まっていたという説もあります

*2:個人的には議員とかは被選挙権の資格を持っている人から無作為にくじ引きで決めても面白そうだとは思いますが

*3:ただ、裁判員制度はくじ引き的に無作為で決定するシステムが採用されていますが

*4:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO100.html

*5:特に議会選で最下位当選者を巡って、くじになる事が見られます

*6:公職選挙法第68条「衆議院比例代表選出)議員又は参議院比例代表選出)議員の選挙以外の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。」の各号に「一投票中に二人以上の公職の候補者の氏名を記載したもの」というものがあり、0.5票ずつで分けることはできない