Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

小室昌友の選挙公報(2012年大子町議会選)

2012年3月18日に投票が行われた茨城県大子町議会選ですが、この議会選の投票結果が非常に興味深い物でした。

選挙結果を見てみると、定数15に対して20人の立候補者が出ましたが、16位が479票、17位が382票に対して、18位が32票、19位が29票、20位が9票と17位と18位に大きな差がついています。今回はこの得票数9票で20位の小室昌友選挙公報を紹介してみようと思います。

この選挙公報では「私の主張」として5つの主張インディーズ候補名物の手書きで掲げています。この主張は何気に具体的で他の候補者に見られるような漠然とした抽象的な主張ではなく、分かりやすい主張と言えます。

この中で比較的インディーズ的な主張としては一つ目の「町の森林整備有効利用を考えて世帯当たり木炭五キログラム年保有です。大子町林業が比較的盛んであり、森林整備という所から、おそらく、間伐材の有効利用等を考えているものと推測されます。ちなみに2012年4月1日現在で、大子町には7,717世帯存在します*1。つまり、この主張が行われるためには合計で年間約3.86 tの木炭を生産、配分する必要が出てきます。これは大子町の平成21年の皆伐と間伐合わせた木材生産量が5,200 m3であり*2、木材の密度が300-450 kg/m3程度と仮定すると*3、原料供給という面からそこまで破天荒な政策ではないと考えられます。もちろん、生産や各世帯の確保スペース、その他コスト等を考えると、問題はそれなりに出てくると思いますが。

それと五つ目で「町職員の残業、休日手当は選挙中は自主的に寄付すること。それによろこびを感じなくてはならない」という事を主張しています。公務員の給与返上というのは典型的な公務員批判(叩き)ですが、この提案が他の一般的な公務員批判と比べて、異色な点として、「そこによろこびを感じなくてはならない」という過激な言葉が踊っており、この辺り、かなり目立っている感じです。

そして、この中でなかなか本気で面白いと思う主張は三つ目の「町議選では、その定数の二割、つまり今回ならば三人の候補者に投票できるようにする。それはより確実に民意に近い」という制限連記制という投票方法を提案している所です。この制限連記制に説明に関しては、wikipedia:制限連記制wikipedia:連記投票を参照していただきたいのですが、こういう、選挙方法に切り込んだ提案をしている候補は結構、珍しいのではないかと思います。

とりあえず、小室昌友の話に関してはこれで終了ですが、18位の斎藤勝之と19位の丹治忠行の両候補に関しても、得票数が特徴的でしたので、言及しておきましょう。

この両候補ですが、それぞれ独立している候補というよりは、どうやら仲間の可能性が示唆されます。何故かというと、この二人の候補の選挙公報には共通点が見られるという点です。その共通点というのは政策に共通点があると言う事ではありません。それでは、何かというと、両方の候補の選挙公報のレイアウトが似ている上に決め手として、最後に両者とも「無断転載禁示(著作権法違反)」と書いてあるのです。これは双方とも「禁止」ではなく「禁示」と書いてある点からも強く示唆されます。

ちなみに選挙公報の無断転載はは著作権法の転載は著作権法違反になるのか、という問題ですが、これは著作権法の第13条によると法的には何ら問題が無いと解釈できます

十三条  次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。
一  憲法その他の法令
二  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号)第二条第一項 に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)又は地方独立行政法人地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第一項 に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
三  裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
四  前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの

e-Gov法令データ提供システム 著作権法

こういう事情があるので、ここで両名の選挙公報を掲載しても問題はないのですが、特にインディーズ候補という意味では興味を惹かれる内容ではありませんでしたし、当人たちが転載しないで欲しい、というのを無理に転載するのはどうかと思いますので、ここでは掲載しないことにしました。