選挙ドットコムさんに寄稿しました(テーマ: 選挙の異議申立と票の集計ミス事件)
選挙情報サイトの選挙ドットコムさんに以下の記事を寄稿しました。
今回は選挙結果に対する異議申し立てについてと異議申し立てによって票の数え直しをしたところ、ある候補者の票として集計されていた票の束が実は別の候補者の票の束であったことが判明したという集計ミス事件を紹介しています。
今回の参考文献情報は以下の通りです。
・大ミスまとめて500票 都議選で選管が計算違い, 朝日新聞 1970-04-16 朝刊, 15.
・計算係の過失か故意 都議選の開票ミス 立会人らメクラ判, 朝日新聞 1970-04-17 朝刊, 14.
・”逆転当選”確実 都議選の開票ミス 東京高裁、調べ終る, 朝日新聞 1970-04-19 朝刊, 15.
・小倉氏、上告取下げ 都議選開票ミス 深野さん当選告示へ, 朝日新聞 1970-06-05 朝刊, 23.
選挙ドットコムさんに寄稿しました(テーマ: 沖縄県の県民投票における一部自治体の執行拒否表明について)
選挙情報サイトの選挙ドットコムさんに以下の記事を寄稿しました。
沖縄県では条例に基づいて、2月24日にアメリカ海兵隊の普天間基地の辺野古移設をめぐる県民投票が実施されることが予定されています。しかし、いくつかの自治体では県民投票の執行を拒否する動きがあり、その自治体では県民投票が実施されない可能性がありました。結局、これは県与党が「賛成」と「反対」の二択から、「どちらでもない」を追加した三択に妥協したことで執行拒否を表明していた自治体は県民投票の執行をすることとなりました。
今回はこのような動きから、過去、2011年の千葉県議会選 浦安市選挙区で浦安市の判断により執行拒否をした事例や青ヶ島村で政府の判断によって、国政と都政の選挙権がなかったという事例を紹介し、今回の沖縄県の一部自治体の県民投票執行拒否が正当なものであるかを考察しています。
なお、今回の一部自治体の県民投票執行拒否の個人的な見解、感想としては以下のようなツイートをしております。
自治体の投票執行拒否って、今回の場合、明らかに正当性がないものなのに、それに屈して、おかしな三択に県民投票をするのはまずいと思いますし、今後の他の自治体の住民投票にとっても悪い前例しか残さないと思います
— Actin/新潮新書「ヤバい選挙」発売中 (@Actin_ium) 2019年1月24日
自治体に執行拒否させて、住民などが裁判やって、自治体の執行拒否は不当であると判決を出させた方が今後の様々な住民投票にとってもよかったのではないかと思います
— Actin/新潮新書「ヤバい選挙」発売中 (@Actin_ium) 2019年1月24日
今回の記事中で言及した拙記事の詳細情報は以下の通りです。
actin.hatenablog.com
actin.hatenablog.com
actin.hatenablog.com
また、参考文献情報は以下の通りです。
・「投票権を侵害」と市民が宜野湾市を提訴へ 原告団募集, 琉球新報 2019年1月16日 11:12.
・籏智 広太, 県民投票を封じる「抜け穴」を自民議員が伝授? 沖縄で広がる混乱, Buzzfeed News 2019/01/17 06:01.
・投票3択可決 県議会、全会一致ならず 条例改正 自民反対5、一部造反, 琉球新報 2019年1月30日 05:00.
岩田たにいずみの選挙公報(2015年小山町議会選)
今回紹介する人物は2015年4月26日に投開票が行われた静岡県の小山町議会選に立候補した岩田たにいずみという人物です。
基本的に選挙への立候補は日本国籍を有して、年齢を満たし、供託金を用意し(これが一番大変なのですが)、公民権が停止されているといった事情がなければ、過去に実刑を食らったといった経歴の人物でも立候補はできます*1。
上に岩田たにいずみの選挙公報を示しました。これを見てみると最初の方に「前科二犯の犯罪人」「再犯の恐れありと、目下保護観察中の身です」と驚くべきことが書いてあります。2015年の統一地方選で自らに前科があることをここまで明言した候補はこの岩田たにいずみ以外に確認することはできませんでした。
さて、このような本来であれば、選挙に不利になると思われる前科持ちという衝撃的な告白をした岩田たにいずみですが、それ以外の部分を見てみましょう。「こんなわたしでよかったら末席へでも座らせてください。古ぼけた小さな明かりですが一隅を照らして見せます」と哀愁漂いながらも意欲ある言葉を述べています。そして、88歳というかなりの高齢であることと前述した前科二犯保護観察中であること、さらに自らを「小山町の危険人物?」と称しており、続いて「自分では俯仰天地に愧じずと思っている厄介者です」と述べています。
このように自らのプロフィールを述べたあと、自分の尊敬する政治家として粛軍演説と反軍演説で有名な斉藤隆夫を挙げています。そして、信条として田中正造と老子の言葉を引用し、政治家の行動をチェックする重要性を述べています。その後は政策公約に移りますが、「小山を日本一にする」と大きく出ており、そのためには30年計画が必要であること、教育や福祉の重要性を述べています。そして、最後に「老骨に鞭打ち、滅私奉公、是々非々に徹します」としています。このように前科を述べた以外は比較的普通の感じでしたが、この政策公約の下に「チェック」「カンシ」「カンサ」という柄のスーツを着て、「SOS」という柄のネクタイを締めた味のある感じのおっさんが「こら、たにいずみ たるんでるゾー」と言っている、なかなかすごいイラストが目につきます。
さて、この岩田たにいずみですが、調べてみると、前科以外にも実に面白い経歴であることが判明しました。まず、以前に小山町議会議員をやっていたという衝撃的な事実があります。また、この前科二犯もある特別な事情がありました。岩田たにいずみは付近の山に手作りの案内看板を多数設置するという活動を行っており、そのユニークで力の入った看板はハイキングが趣味の人達の中では比較的有名でファンの人達でそれらの手作り看板の写真展が開催されるほどだったようです。しかしながら、この活動が行政機関と衝突を招く事になります。2011、12年に小山町が設置した看板が間違っているとして、ペンキでバツ印を付けたり、のこぎりで切断するということをして、2回執行猶予付き判決を受けており*2, *3、これが選挙公報に記載していた前科二犯の実情であったようなのです(現在は執行猶予期間中のようで保護観察中というのもそういう事情があるものと思われます)。ただ、町が作成した看板はどうも本当に間違っていたらしく、町が岩田たにいずみの指摘を受け入れたという情報もあり、一概に岩田たにいずみが一方的に悪いという事情ではないようです(無論、器物損壊行為は罪に問われることべきです)。
このような自らを前科二犯であると告白した岩田たにいずみですが、得票数は314票(総有効投票数9,800票、無効票112票)で15人中15位(定数13)と健闘はしたものの落選という結果に終わりました。
なお、この岩田たにいずみですが、2017年に死去していたようです*4。
*1:なお、議会選の場合はこれに追加してその選挙の選挙権を有する必要があります
*2:https://www.yamakei-online.com/journal/detail.php?id=1941