Experiments of Actin

『インディーズ候補』(泡沫候補)の特徴的な選挙活動を中心に少し変わった選挙、政治関係の話題を取り上げているブログです。

後藤輝樹の選挙公報(2016年東京都知事選)

今回は2016年7月31日に投開票が行われた東京都知事に立候補した後藤輝樹を紹介します。

後藤輝樹は2011年の神奈川県議会選を初選挙とし、東京都内の区長選や議会選などの各種選挙に立候補していたインディーズ候補ですが、東京都知事選は今回が初めてです。今までの選挙においては全裸の選挙ポスターなど奇矯な選挙活動で話題を呼びましたが、今回の東京都知事選ではNHKで放映された政見放送において、ひたすら性器の俗称を連呼したため、東郷健以来の2例目である公職選挙法150条の2に基づいた候補者に無断に政見放送の内容を編集されるという歴史的事件が大いに話題となりました。この事件に関してはBLOGOSさんに法的な問題点を解説した記事を寄稿しています。詳細は以下のリンク先を参照してください。

actin.hatenablog.com

また、以下のような名前も書かない*1軍服姿の選挙ポスターや前回、立候補した2015年千代田区議会選*2に用いた全裸ポスター掲示するなど余りにも奇矯な選挙活動も大いに話題になりました(なお、以前使用した他のポスターも使用していたようです)*3



(注:いずれのポスターも掲示責任者の住所の部分を一部加工しています)

このように世間一般の認識では極めてふざけた活動を行っていたかのように見えた後藤輝樹ですが、選挙公報ではどうだったのでしょうか。選挙公報を下に示します。

びっしりと文字が書かれており、そういう意味ではインディーズ候補らしい選挙公報となっています。しかし、内容を見ると時たま奇妙なものはあるものの、エコカーの普及などの環境問題への言及や全ての公立学校の授業料な給食費等の無料化といったこと、ベーシックインカムの導入、都心の最低賃金を1200円にすること、東京メトロ都営地下鉄の料金体系の見直しなどの具体的な政策や自身の政治信条であるかなり強めのやや排外的な右派的な政策や主張が記されています。また、東京オリンピックパラリンピック中止」と「築地市場移転中止」といったことも記されていますが、これに関しては後藤輝樹のウェブページによると、この2つを主要公約として設定しています。これは他の全ての候補者の選挙公報を見たところ、この2つを訴えている候補は自分しかいないことから、この「東京オリンピックパラリンピック中止」と「築地市場移転中止」を主要公約として設定し、両方とも望む有権者は自分に入れてほしいことを記しています。

選挙公報は特にとんでもなく奇矯なものではなく、具体的な政策を記載していました。さて、色々と話題になった政見放送ですが、実は話題になったNHK版以外の日本テレビ版と文化放送(ラジオ)版の政見放送では内容がいずれも異なり、政治的信条や政策を述べています。また前述したBLOGOSに寄稿した記事でも述べましたが、性器の俗称を連呼したNHK版の政見放送でも東郷健政見放送削除事件の前例を熟知し、表現や言論の自由に関して議論を呼び起こすことを目的としていることをブログで述べています*4*5

NHK
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日本テレビ
www.youtube.com

文化放送(ラジオ)版: 後藤輝樹本人が自宅で再録したもの
www.youtube.com

このようにNHK政見放送ばかりが話題になったものの、実際は具体的政策を述べ、他候補との政策を比較し、目玉政策を主張したり、話題となったNHK政見放送自体も議論を呼び起こすことを目的とした(方法は議論は呼び起こすものの)まじめな候補でありました。

さて、選挙結果ですが、得票数7,031票(得票率0.107%、無効票73,938票)で21人中13位*6という比較的健闘した結果に終わっています。

*1:ただしポスターには書かなくてはいけない掲示責任者の部分に自身の名前を小さく掲載しています

*2:この千代田区議会選については同人誌で紹介しています

*3:以前の選挙も含めたポスターは後藤輝樹本人のウェブページでも見ることができます

*4:http://gototeruki.blog.fc2.com/blog-entry-378.html

*5:http://gototeruki.blog.fc2.com/blog-entry-395.html

*6:http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/election/tochiji-all/tochiji-sokuhou2016/

選挙ドットコムさんに寄稿しました(テーマ: 姫島村長選)

選挙情報サイトの選挙ドットコムさんに以下の記事を寄稿しました。

go2senkyo.com

今回は1955年の村長選で選挙戦が行われて以降、約60年もの間、村長選が選挙戦にならず、無投票状態が続いている姫島村について取り上げています。ここでは姫島村長選がこのような異様な状態に至っている複合的な事情を紹介しています。

(10/18追記: 大分合同新聞の記事によると村の教育委員を務めていた人物が村長選に立候補する意向を表明し、選挙戦になる可能性が出てきました)

なお、今回の参考文献情報は以下の通りです。

・藤本村長が藤本議長に辞表, 大分合同新聞 1957-11-04 朝刊, 1.
・藤本姫島村長が辞表, 大分合同新聞 1957-11-05 夕刊, 1.
姫島村長に鹿野氏, 大分合同新聞 1957-12-22 朝刊, 1.
・町村長 腕くらべ 姫島村長 藤本熊雄氏,大分合同新聞 1962-01-06 朝刊,6.
姫島村長 藤本熊雄氏死去, 大分合同新聞 1984-10-26 朝刊, 15.
・来月20日に告示 姫島村長選, 大分合同新聞 1984-10-31 朝刊 県北 久大,7.
姫島村長 無投票で藤本氏, 大分合同新聞 1984-11-21 朝刊, 5.
・姫島 その歴史と文化 近代 西村英一と藤本熊雄, 大分合同新聞 1988-11-05 朝刊 県北 久大, 8.
・"島の父"しのび 姫島村で故藤本熊雄銅像まつり, 大分合同新聞 1989-10-26 朝刊 県北 久大, 12.
・わが村長選、48年間無投票 大分・姫島村(数の詩), 読売新聞 2003-01-27 地方夕刊, 16.
・半世紀、無風の村長選 「政争より団結」/大分・姫島,読売新聞 2008-10-27 西部朝刊,.
・無投票半世紀 政争の反省 機に 大分姫島村長選 親子2代 大きな争点無し,朝日新聞 2008-10-27 夕刊 西部本社, 11.
・ニッポン密着:大分・姫島村、13人に1人が村職員 息づく「支え合い」,毎日新聞 2009-02-15 朝刊,27.
・カオスの深淵 民主主義とは問い返す島,朝日新聞 2012-01-01 朝刊,1.
・大分・姫島村議会 15年ぶり質問,読売新聞 2012-09-27 朝刊,34.
・選挙:大分・姫島村長選 無投票「16回連続」か "世襲"現職、8期目挑む--きょう告示,毎日新聞 2012-10-30 西部朝刊,24.
姫島村長選 16回連続無投票 政争避け無風60年,朝日新聞 2012-10-31 朝刊 大分全県,31.
・無投票8選に村民賛否 姫島村長選,読売新聞 2016-08-19 朝刊 大分, 33.
藤本昭夫, 町村長随想 姫島村のワークシェアリングについて, 全国町村会.
姫島村 平成27年度姫島村の給与・定員管理等について

選挙ドットコムさんに寄稿しました(テーマ: 選挙の公費負担制度の悪用)

選挙情報サイトの選挙ドットコムさんに以下の記事を寄稿しました。

go2senkyo.com

今回は選挙運動において資金力が大きな差が出てはいけないように新聞広告費や選挙用はがきなどの選挙運動費用の一部を行政が負担してくれる「公費負担制度」を悪用して、金儲けをしていた事例を紹介しています。

記事中には掲載できなかった補足情報ですが、取締りの激化や各方面の監視が強まった結果、選挙用の無料はがきの横流しができなくなり、公費負担制度を悪用しようとした多数の泡沫候補がはがきを大量に余らせる結果に終わりました。この時、驚くべき事にこのような不正を取り締まる組織である選挙管理委員会にはがきを買ってくれるように泣きついたという信じられないような候補がいたようです*1

なお、今回の参考文献情報は以下の通りです。

参院選(東京地方区)にインチキ候補,読売新聞 1956-06-27 朝刊,7.
・相変わらず多い 悪質ホウマツ候補 ひとかせぎねらう,朝日新聞 1960-11-08 朝刊 10.
・裏側からみた総選挙 本社記者座談会,朝日新聞 1963-11-23 朝刊,14.
・ホウマツ候補の台所 広告のリベートで供託金まかなう,朝日新聞 1963-12-29 夕刊, 7.
・選挙運動など改善 公選法改正案成る 供託金を倍額に 「ホウマツ候補」の抑制,朝日新聞 1964-04-20 夕刊,1.
・選挙を食いもの ほうまつ候補 締め出しに法改正,朝日新聞 1965-06-18 朝刊,14-15.
・手を焼くホウマツ候補 金もうけ・売名ねらう,朝日新聞 1967-01-07 夕刊,9.
・「ほうまつ」手を出せず 浄化ムード、監視強まり, 読売新聞 1967-01-09 朝刊, 15.
・ことば 供託金没収,朝日新聞 1977-07-13 朝刊,5.
・選挙広告の国費を食いもの 参院比例区超ミニ新党乱立のウラ 代理店が供託金払う,朝日新聞 1986-07-10 朝刊,22.
・悪用された公営選挙 ”肥後事件”ひな形に 業界、年々競争が激化,朝日新聞 1986-07-10 朝刊,23.

*1:ここでは「泡沫候補」という言葉を使用していますが、「泡沫候補」と「インディーズ候補」のあくまで個人的な使い分けの基準として、今回の様に選挙制度を利用して金儲けをしようとする候補を「泡沫候補」、それ以外の候補を「インディーズ候補」としています